第 05 章「宿命」
第 01 節「民衆と国家」
著者はこの節を書き起こすにあたって、はじめ「国家と民衆」という題を考えた。
しかし、国家があって民衆があるのではない。
民衆があって国家がある。
このことを主題として物語を進めたい。
LIFEの護衛騎士ノイは、続々と集まってくる昔の同僚や後の世代の騎士たちに、最初は自ら剣を振るって手ほどきを与えたが、元より彼以上に腕が立つ強者もいる。
その中から教官となれそうな者を抜擢し、騎士団結成の目的や“LIFE”戦術の要諦を語り込んでいった。
酒場でサーベルを抜いてノイに挑戦してきたウタックも、今は心を入れ替え、酒もやめて指導側に立てるようになった。
彼は横暴な振舞いを悔いたが、ノイの力量ならば必ず受け止めてくれるという信頼があったともいえる。
犬に乱暴したオルグスも、ノイが再三家まで訪ねていったことで立ち直ることができた。
ファラはウェイトトレーニングを兼ねて、自前の無刃刀を使った。
ルアーズに借りていた砂入りの錘(おもり)は役目を終え、新たに騎士たちから譲り受けた「ガントレット(鎧の小手)」を着用することにした。
ここでの大きな課題は、父と同じ「剛剣術」の修行を積む所にある。
そしてこの少年が拳法の特訓を受けてきたように、騎士の中でもとりわけ未成年の志願者に対しては、ルアーズが稽古をつけた。
練習用の防具を着用する時の彼女は威容があり、立ち向かう者は女性であることを忘れるほどだ。