第 04 章「開戦」
第 03 節「人生の師」
シェブロン博士は、やや憔悴(しょうすい)した面持ちで宿に帰ってきた。
ノイが時間に迎えに行き、一緒に戻った。
トーハは昼間こそ技師仲間の元へ行っていたが、夕方には例のごとく1階の食堂で話し込んでいた。
滞在初日に食堂で夕飯をとって以来、部屋に運んで会議と兼ねてきた。
そのため、トーハが日々こうして時間さえあれば宿の者と談笑していることは、一行に対する理解を深める上で一役買っているのである。
この日も部屋での食事となったが、博士は厳(おごそ)かな調子で語った。
「リザブーグ王国が進路を過(あやま)たないように、わたしは国王モワムエの近くで仕事をしなければならなくなった。
王宮の外に出られる機会が制限されることになる。
ついては、皆に頼みたいことがあるのだ。」
まずトーハには、入国後、非統制機から回収した「円盤(ディスク)」の解析をメレナティレ城側に知られることなく進めてほしいと念願した。
そして4つの城下町の工場区域をまわりながら、味方を増やしておいてほしいと。
ノイには騎士団の結成を全て託し、志願者が漏れなく参加できるよう町々を見聞するようにと指示した。
また個々人の剣術を“LIFE”的戦術へと昇華させてこそ意味があると語った。
ファラには、スヰフォス学師の協力を得て、ルアーズとともに騎士団の訓練に参加し力を付けるよう指針を与えた。
それから博士が直接講義できなくなるので、聞きたいことがあれば今夜中にまとめておくようにと言った。
早速、ファラは先に考えていた内容を問うてみた。
シェブロンは表情を緩めて応えた。
「本当に覚えるのが早いね。
『ドゥレタ』については攻撃魔法の前に、回復魔法を身に付けるといい。
大地に蓄えられたエネルギーを、魔力として借り受けるのだ。」
博士は少し考えているようである。
「『ドファー』については、『メゼアラム』と合わせて用い、狼のヴィスクに変身してみなさい。
更に・・・。」
ここからが難題であろう。
北のレボーヌ=ソォラで弟子のタフツァが研究しているところでもある。
「『テティムル』は相手から吸収するだけでなく、自分の魔力を相手に託す用途でも使えるのだ。
君が消耗してしまうけれども、幾多の戦場にあっては、こうした局面にも出くわすことになるよ。
問題は『グルガ』だな・・・。」
博士は明日から王宮に詰めるための準備もあれば、彼にしか対処できない問題も多く抱えている。
そんな中、「グルガ」の修得方法については少し時間がかかりそうだからと言って小部屋に入ってしまった。