The story of "LIFE"

第 04 章「開戦」
第 03 節「人生の師」

第 10 話
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午後、アイディールの宿から近い、工場区域の空き地で、積み重ねたまま放置してある鉄板の上に座って、ファラは「ググ」の練習をしていた。

これから磁界を作ろうとする一帯に、道で拾った釘をばら撒いてみる。

魔法の文字を並び通り読み上げることを「詠唱」と呼ぶが、ファラが声を出しながら「ググ」を起動すると、釘は一斉に向きを決め、中にはバランスが定まらずに振れているものもあった。

彼はいったん魔力を収めて、今度は釘を拾い集め、再度磁場を作り、そこへバラバラと落としてみた。
魔法を使っていなければ鉄板で跳ね返って飛び散りそうなものだが、硬直したようにピンと立って振れたり、ピタりとくっついて動かないものもある。

「わははっ、こうやって磁石を作るのか・・・。」

ファラは少年らしく、川で砂鉄でも集めて売り、お金を貯めようかなどと想像して一人で笑っていた。
そこへ、今日初めてルアーズが来た。

「なんだか楽しそうね。
・・・また新しい魔法を覚えてしまうなんて。」

彼女は拳法の打ち合いに使うグローブとヘッドギアを持ってきてくれたのだ。
これから午後の特訓が始まる。

二人はいつものように南のゲートから町の外に出た。
まずは第一ラウンド、試合形式である。

「座り込んだり地面に手を付いたらそこまで。
いい?」
「はい、負けませんよ!」

ルアーズが右手を繰り出した。
ファラは左腕で受けながら身を引く。

すかさずルアーズが左拳を振り上げるとファラの右頬に入った。
よろけて飛び退くファラに、追い打ちをかけるようにして詰め寄ったルアーズは、右腕でガードしながらもう一撃、左手から相手の右胸辺りの隙を突く。

ファラは慌てて拳を受け止めようとしたが、力は彼女の方が上である。
アッと声を漏らして、もう一歩、二歩と飛び退いてしまった。

打たれるばかりではいけない。
今度は両腕でガードしながら、一か八かの蹴撃を狙う。
右足から上体をひねるようにして繰り出すも、掻い潜られて背後を取られ、強烈なパンチを三発ほど食らってしまった。

「ぐわっっ・・・。」
「あらあ、一発も入れられないじゃない。」

これは勝負あった。
ファラは背中を押さえながら前に倒れて、しばらく起き上がれなかった。

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