The story of "LIFE"

第 04 章「開戦」
第 03 節「人生の師」

第 09 話
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酒場を退出しようとすると、今度は昔から彼にいつも食って掛かったウタックという男が怒鳴り声を出してノイを呼び止め、厚い刃のあるサーベルを抜き、その背で自分の手の平を叩きながら近寄ってきた。

「こら、挨拶もねえのか。
表に出ろよ。」

皆、何事が起きたかと騒ぎ始める。
性質(たち)の悪さに輪をかけて酒癖の悪い奴だが、ノイはむしろ歓迎した。

「いいだろう、手当ての準備はあるんだろうな。」

酔っているとはいえ、元特攻隊を引き連れていた男である。
刃を天に向けて上段に構えるウタックには隙がなかった。

ノイはポケットから銅の硬貨を一枚取り出し、親指で弾いて相手の方へ飛ばした。
これをウタックが宙で真っ二つに切り落とすと、その切っ先はもうこちらに向いていた。

「さすがに速い、だがなウタック、酒に溺れた騎士が一体、何を守れるというんだ。
そのちっぽけなプライドか?」

彼はファラの訓練に使っている丸盾をそのまま持っていたので、突きを受ける覚悟で相手の間合いに飛び込んだ。

鉄でできた盾は強度が高くない。
この特攻隊長のサーベルを受ければ突き破られてしまうだろう。

その刹那、盾に刃が当たる感覚で手を離したノイは、それを捨ててしまい、腹部に膝蹴りを決めた。

「無様だぞウタック。
剣も魔法も身でかわすこのわたしが、盾に頼ってお前の刃を受けるとでも思ったか。」

この酔った暴漢の、見境(みさかい)を知らない振る舞いにほとほと迷惑していた他の元騎士たちが集まってきて、情けで介抱しながらノイに「ナイス」と声をかけた。

ウタックはうずくまり、武器を取り落として涙を流しながら言った。

「ノイよ、お前が羨ましいぜ!
一体どんな人の元にいるか知らないが、俺にも護衛の仕事を与えてくれないか。」

彼にも明日訪問すると約束を交わし、ノイは酒場を後にした。

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