The story of "LIFE"

第 04 章「開戦」
第 02 節「時の覚醒(かくせい)」

第 20 話
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「すみません、魔法使いが使う剣って、ありますか?」
「坊や、珍しいねえ。
俺も長年、人殺しの道具を作ってきて、最近ではそういう平和的な武器の需要が増えないものかと、悩んでいたところだ。
ほら見てくれ、『無刃刀(むじんとう)』だ。」

主人は体格のいい大男だが、その剣を持ち上げたり、振り翳(かざ)して見せるのに、体のバランスを取るのが大変らしい。

「こんなものを作ったはいいが、誰が使いこなせるのかね・・・。」

これを見たファラは、一瞬目を輝かせた。
大きな剣を見て憧れている自分に気が付いた。

実際に持ってみると、両手で扱う武器であるにしろ、今の腕の力では振れそうもないと分かって、少し落胆してしまった。

「これが、おいくらでしょう。」
「趣味で作ったようなものだからな。
使ってくれるなら、利益は取らない。
材料代で5000チエルにしよう。」

16歳といえばまだ身長も伸びている年頃である。
腕の力も、いくらでも付けられるに違いない。
それに、重さと強度を活かして振り下ろすことが主戦法ならば、全身の筋力を鍛えて剛剣術の修行を積むことで、ものにできるのではないか。

「どうせ売れはしないさ。
俺の理想を形にしてみただけだ。
将来、これを使うことになったら、坊や専用の武器に作り変えてやろう。」

杖から剣への移行にも多少の時間を要することが考えられる。
戦法の習得と、重量・強度への慣れ、そしていずれはこの「大無刃刀」を使えるようにと考えてファラがリクエストすると、主人は陳列もされていない一振りの剣を出してきてくれた。

それは刃を持たず、刀身は装飾のない鋼のコーン(円錐形)だが、先端がロッドのように楕円体になっており、今のファラが使うには丁度よい重さのようだ。
強度に関しても店主の自信作で、かなり手を込めて鍛造(たんぞう)したという。
鍔(つば)がV字型をしているのも、剣撃を受け止めるのに便利そうで、両手剣として長く頑丈な柄(え)も備えていた。

「電気は通しますか?」
「いや、この鋼は導体にならない。
高電圧で万が一流れても、グリップを握っていれば大丈夫だ。」

ファラはとても気に入って、宙を薙ぎ、真っ直ぐに振り下ろし、正面に突きを繰ってみた。

「ん、型が身についているな・・・。
似合うじゃないか。
力をつけたらまた来てくれ。」

代価は2400チエルだった。
クーポンに、ごく小さな銀のインゴットを渡すと、紙幣と硬貨の釣り銭が出た。

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