The story of "LIFE"

第 04 章「開戦」
第 02 節「時の覚醒(かくせい)」

第 15 話
前へ 戻る 次へ

アイディールの宿では昼食の支度ができていた。
宿の者と食堂へ移動してそのまま話し込んでいたトーハは、そろそろ皆が来るだろうと待っている。

一行はここで滞在する時、上の階にある奥の広い部屋を借りることにしていた。
博士と話しながら階段をおりてくるノイは、こういう場所でも護衛の心構えを忘れない。

また博士は大事なことを話す時、場所にはよくよく気をつけている。
往来を歩いたり、公共の場所にいると、その場にふさわしい話をするのだ。
皆の労をねぎらったり、周囲の人が共感できるよう、そして楽しくにこやかに過ごすよう心掛けていた。

これは決して演技をしているのではない。
普段から様々に抱いている思いを、最もふさわしい場面で使い分けて言葉に表しているのだ。

ファラたちも戻ってきた。
トレイに皿を乗せ、スプーンやフォークを取って、自由に料理を盛り付けていく。

最初の食事を食堂でとることにしたのは、宿の人たちに顔を見せて知ってもらい、安心させたり、親しくなろうとする気持ちからである。

魔法研究のグループ「LIFE」といっても、多くの人はその目的など理解しないだろうし、中には疑念を持ったり怪しんだり、危険視する人もいるかもしれない。

旅先で知り合う人々に、それがたった一度の出会いでも、LIFEという一行がどのような集まりなのか、直接触れ合うことで少しでも好感を持ってもらうのはとても大事だ。
そうすることで、難しい理論など話さなくても、「あの人たちがおかしなことをするはずはない、“LIFE”という主張もきっと正しいものであるに違いない」と信頼関係ができるからだ。

この点、少年ファラは誰から教わるともなく、自然に話しかけて良き味方を増やす力を具え持っていたといえるだろう。
こうした“LIFE”思想に由来する一種の快活さは人に移るのである。

席上、当面の動きなど、作戦的な内容は一切語り合わない。
パーティで行動することに慣れているルアーズもそうであるし、ファラも時と場合を考えて行動できる習慣が身に付いているのかもしれない。

「ぼくの恩人に、戦場や野生動物からの危険の切り抜け方ですとか、一人対大勢の戦術なんかを教えてくれたスヰフォス先生という人がいて。
さっきお店でばったり再会したんです。
ここを訪ねて来たいと言ってました。
近々夕飯に招待していいですか?」
「ああ、いつでも、今夜でも構わないよ。
滞在中、いい時に来ていただけるようにお伝えしてほしい。」
「私の仲間の一人とも、同じ村で旧知の間柄だそうで。」
「そうでしたか!
自由市国ミルゼオの立場から、両隣の2つの国をどう見ておられるか、お考えを伺ってみたい。」

前へ 戻る 次へ
(c)1999-2024 Katsumasa Kawada.
All Rights Reserved.