The story of "LIFE"

第 04 章「開戦」
第 02 節「時の覚醒(かくせい)」

第 12 話
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ロボットが道を塞いでいるので、橋の前に馬車を止め、御者が管制用のIDをかざして見せた。
鉄の鞭(むち)を構えて両肩にはキャノン砲を搭載しており、黒と赤で塗られたボディには「DK600A」と書かれている。

城下町へ野良機体を寄せ付けない目的で置かれたらしいこのガーディアンはIDに手の平を近づけてチェックを行い、すぐに道を開けるように横へ移動した。

20メートルほどの橋は金属製で、上を走っていて揺れることもないが、緊急時には城側へ収納できる機能が備えられているようだ。

ゲートにはまた兵士が2名、門番が2名おり、各自のパスを確認して入国の目的などを訊ねてきた。
受け答えた内容は記録され、コンピュータを通じて国内どこにいても管理されることになるという。

御者とはここでお別れである。

「いつも世話になるね。
どうもありがとう。
フスカ港に寄る時はまた君を訪ねるよ。」

御者は50歳台の前半くらいで白髪が目立ち、口の周りに髭を生やしている。
何度かの同行ですっかり博士を尊敬し慕うようになった。
“LIFE”という魔法については、いつか自分にもできると信じていた。

ノイが謝礼金を支払って御者を見送ると、ゲートが重々しく開いた。
午前10時を過ぎたばかりである。

「アイディールの宿に行こう。
ルアーズさんとファラ君も、少し休んでいくといい。」

薄曇りの城下町は、規則的な音を立てて動き続ける機械の工場と、昔ながらの王国騎士が所々に配されているという、この国のありふれた光景を見せていた。

子供たちが5人ほどで、はしゃぎながら駆けている。
「機械兵」になったつもりで、「非統制機」の役回りをしている仲間を追いかけているらしい。

「数年前までは『騎士ごっこ』というのが王国の子供たちの遊び方だったのですが・・・。」
「騎士の解雇が増えているようだな。
彼らが職を得られているかどうか、調べてきてくれないか。」

ほどなくして一行は宿に到着した。
15年前、LIFEに隠れ家を提供してくれた「軽食屋」の人々が、今では宿を経営するなど、国内の市民層に根付いているのである。
「アイディール」というのは「理想」という意味だが、東方の大陸「イデーリア」も同じ語源を持つ。
ここの人々は元移民であり、故国から名称を得てもう長いことリザブーグで暮らしている。

トーハが会計に立ち、何やらそのまま話し込んでいるようだ。
博士とノイは挨拶を交わして部屋へと向かう。

「博士!
町を見てきてもいいですか?」
「うん、いっておいで。
昼食は1階だよ。」

ファラはルアーズとともに外へ出た。
道中、関門を通過してからは殊に王国の不穏な動きを気にしていた彼だが、父と暮らした古都アミュ=ロヴァとも全く違ったこの新天地と機械のにおいに、不思議な胸の高鳴りを覚えるのだった。

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