第 04 章「開戦」
第 02 節「時の覚醒(かくせい)」
「こんなメカが徘徊しているのでは、城下町の外など歩けたもんじゃない。」
トーハは辟易(へきえき)しながら機体を調べている。
製造された工場の手掛かりとなる何かがあるはずだ。
鉄板の外甲を開けてみると、肩の間に埋(うず)めたような頭部の真ん中には大きな単眼があり、その奥に、行動パターンをインプットしたと思われる「円盤」が差し込まれている。
町にある技師たちの電算機にかければ、野良機体に関する様々な情報を読み取れるに違いない。
彼は「円盤」を回収しておいた。
「私は“生命”を重んじる立場から、このような『兵器』の使用は認めない。
機械兵で軍事力を増強することがリザブーグの方針であるなら、国王に直接、その非を訴えていかなければ。」
ファラが御者を迎えにいって、馬を連れてきた。
再び馬車が動き出す。
「ルアーズさんのパンチ、すごい威力でしたね。」
「強い合金でできていて、上手く使えば金属を貫通できるのよ。
私も対人戦の場合は“命”を優先にするから、これの用途は『シールド(アーマー)・ブレーカー』ね。
正々堂々、肉弾戦へ持ち込むために。」
「ぼくたちは“LIFE”という、究極の魔法を求めて旅をしているんです。
ルアーズさんの戦法はきっと“LIFE”につながっていきますよ!
ぼくの父は剣士でしたが、やはり“LIFE”への到達を目指して修行しているようでした。」
「『LIFE』・・・?
そういわれてみれば、私たちのリーダーも『活人(人を活かす)剣』を理想とする剣士だから、私やもう一人の魔法使いも同じ考えで旅をしてきたんだわ。」
「それは心強い・・・!!
お仲間の方は、今はどちらに帰られているのですか?」
「フスカ港から北へ5日間ほど歩いて旅をすると思います。
そこに彼女の村があるんです。」
「もう一人の方というのは?」
「はい、ルモア港の近くに実家があるそうで。」
彼ら3人は出身地が異なっているが、旅の目的で一致していた。
それは単に力を求めるというのではなく、それぞれの国で今起きていること、これから起きようとしていることを憂(うれ)えての、祖国を守るための修行であった。
半年後、フスカ港で合流することになっている。
やがて前方に橋が見えてきたが、同時にさっきのロボットよりも大きな機体が視界を遮った。
今朝方ルアーズを追跡していた機械兵と似た配色が施されていることから、「非統制機」ではなく、王国の警備兵であるらしい。