第 04 章「開戦」
第 02 節「時の覚醒(かくせい)」
「私があの機械の両肩に『ザイア(冷気)』をかけて発射を遅れさせる。
その間に本体とロケット砲を切断してくれ。」
ファラは味方がすっぽりと入るほどの大きく厚いバリアで身を守ったまま、相手の懐(ふところ)へ向かって突進した。
単独バリア並用で機関銃や打撃は跳ね返せるだろう。
最も危険な位置へ飛び込んだ形だが、ランチャーが凍り付いている今しかとれない行動だ。
30秒ほどの連続射撃をこらえる。
ここは魔法の方が強く、バリアは無傷なまま、弾切れに追い込むことができた。
次に機体は、いかついハンマー状のアームで右からの強打を繰り出してくる。
ロニネが揺らいで、体にも幾らか衝撃が伝わってきた。
ロボットが反対側のアームを振り上げた時、ノイの切っ先が2メートルほどの高さから一気に振り下ろされるのが見えて、ズシンと鉄塊の落ちる音がした。
ロケット砲も凍りついたまま腕といっしょに外れた。
剣撃を浴びせるために飛び上がったノイへ、博士が「ゾー(重力)」をかけて威力を強めたのだ。
このような連携攻撃はよくやるらしい。
相手が失ったのは右の腕で、バランスを崩し、左側へ倒れ掛かってきた。
ルアーズは、ファラが敵に駆け寄ったと同時にバリアからも機関銃の射撃圏からも自ら出ていて、敵の右背後へまわっている。
彼女は「カタールナイフ(刃の付いたナックル)」を右手の拳に付けていた。
ノイの剣撃からの時間差で、絶妙のチェーン(連鎖)がつながる。
コンピュータが危機を感知して反撃に出る前に、ランチャーの接合部分を目掛けて鋭い刃で打ち貫いてしまった。
その一撃には、およそ人の拳から繰り出されたとは思えない威力が発揮された。
武器に込めてもらったという、衝撃の魔法「トゥウィフ」である。
ロボットは残る左腕まで失い、前へ倒れて、もはや起きあがることもできない状態に陥った。
「自爆する危険性がある。
可哀想だが、高熱で制御系統を破壊してしまおう。」
一帯に「ググ(磁力)」による磁場が張られると、一連の行動と処理中のデータは消し飛んでしまい、コンピュータ・プログラムはリセット状態となった。
目の前に敵がいることも、両腕を失ったことも、今の自分の体勢も、一から認識し直さなければならない。
しかし、猶予はない。
今が戦闘中であって万事休すと判断すれば、敵を巻き込んで爆発するよう仕掛けられているものもあるからだ。
トーハが近づいて調べたところ、幸い、この機体に爆弾は積まれていないらしい。
そして彼は「コア」の位置を探し出した。
動力部に博士の強力な「ズーダ(熱)」が発動して、機体をオーバーヒートさせ、思考不能のスクラップにしてしまった。