第 04 章「開戦」
第 02 節「時の覚醒(かくせい)」
つい一週間ほど前、倍もある大きな馬車でタフツァやソマ、フィヲやザンダなども一緒にここを通過したのである。
ドガァは専用にIDを発行してもらい、馬車の前を歩いていた。
その時と比べると人数は少ないが、選抜した分、行動はしやすい。
「おや、ご一行。
大きなライオンはどうしたんだい?」
「先頃、教え子たちを修行の旅に見送ってきた。
わたしは王国でやり残した仕事があって、戻ってきたんだよ。」
建物の中には3人の門番がいて、国境の内側と外側にも2人ずつ兵士が立っている。
ここは旅人が通るだけの小さな門だった。
ファラはいったん馬車をおり、中立自由市国ミルゼオとの間に築かれた高く厚い壁を見渡した。
これが南北の海まで続いているという。
「壁も関門も以前のままだけれど、ロボットたちは一体、どこから出入りしているのかしら・・・?」
すると、兵士の一人が答えてくれた。
「不良品は、もう少し北の大門から他国に輸出される途中のものや、南のミナリィ港から船で送られる予定のものが、勝手に逃げ出して増えてしまっているんだよ。
機械兵は近隣国からの要請で巡回させているのさ。」
門番の一人がIDを持ってきた。
カード状になっていて、持ち回り品ではなく衣類に付けるようにと説明された。
ルアーズが帰国中に警備ロボットに追跡されたことを話すと、門番の長は謝意を示してすぐに制御プログラムを修正させると言った。
馬車が動き始め、トーハが口を開いた。
「目に見えたことじゃないか。
被害が出てから対処するのでは遅い。
やはり何かがおかしい。」
「王国騎士たちが職を失いつつあるようです。
機密事項を守らせるには、人よりもロボットの方が都合がいいかもしれない。
すると市街の様子もだいぶ変わってきているに違いない・・・。」
「博士には国王モワムエと会談する準備にあたっていただきます。
その間、わたしが旧知を訪ねてまわりますので、トーハさんには技術者層を、ファラ君とルアーズさんには市民層の情報収集をお願いしたいのです。」