The story of "LIFE"

第 04 章「開戦」
第 02 節「時の覚醒(かくせい)」

第 06 話
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朝食の席では、リザブーグの国境を越えて巡回と排斥行動を続けている「機械兵」のことが話題になっていた。

「メレナティレ城で、何が起きているのだろうか。
今の国王モワムエが即位した頃から単独での動きが目立つ。」
「メカの研究と開発を進めているのがメレナティレだ。
生産は本国でも行っている。
ワシが思うには、野良機体はメレナティレが放っているんじゃないか。」
「襲撃を受けた後、リザブーグ本国からは詫び状が届いています。
モワムエは、表向きはメレナティレの軍事行動を抑えてわたしたちに協力する姿勢を示していますが、今なら会って本意を確かめることができると思うのです。」

シェブロンが今回のパーティを組んだ目的がそこにあった。
新生リザブーグが成って10年も続いた前代から、現モワムエ国王にかわり、まだ5年が経たずにいる。
どのような国家であれ、民衆の支持を得た君主がいるならば、共生のためにぜひ会って話さなければならない。


世界はあまりにも“LIFE”に背を向けていた。

人間が作り為す社会において、体制・イデオロギーといった民族や国家としての身の振り方が先行し過ぎ、その根本に“各人の内なる開花”という目的が置き去りにされているのではないか。

民衆には“生活”がある。
生命活動の場で、自他の能力が最大に発揮されていくことこそが人間の幸福であり、本来有する権利といえるだろう。

これを実現するため民衆から貸与されたものが「権力」であって、権力が社会的な地位であるとか、年齢とともに高い地位を得るだとか、あまりにも転倒であり、愚かである。

一行がはたらきかけることによって、どれだけの権力者の意識を変革できるだろうか。
またどれだけの民衆に語りかけて、“LIFE”という、この世にただ一つの価値(たから)を、個々の内に目覚めさせていけるだろうか。

ルアーズとファラが皆の食器を片づけている。
トーハが関門の様子を見に行ったようだ。
ノイは博士の近くにいて、入国後の指示を受けていた。

そしてようやく午前8時を告げる砲音を聞き、皆馬車に乗り込んだ。

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