第 04 章「開戦」
第 02 節「時の覚醒(かくせい)」
川底には確かに潜水する人影があって、なかなか上がってこなかった。
上手く逃れてしまったところを見ると、追跡を受けたのはこれが初めてではないかもしれない。
あまり近くにいると驚かせてしまうので、ファラは遠めから様子を伺っていた。
岸辺に姿を見せたのはやはり女性で、機械兵が去ったのを確かめているようだ。
彼女が一息つくまで待ってからファラは川に小石を投げ込んでみた。
「大変でしたね。
旅のかたですか?」
すぐにこちらに気が付いて、彼女は立ち上がってきた。
ごく軽装な身なりである。
「ええ。
武術の修行から帰ってきたら、こんな管制を布いているなんて・・・。」
晩秋の朝方である。
ファラは、風邪をひくからと気遣ってキャンプで暖まるよう促した。
「魔法拳」を使うというこの女性は名前をルアーズといい、入国したら当分案内してくれるそうだ。
年は彼よりも2歳ほど上らしく、互いに親しみを感じていた。
辺りはようやく陽が差してきて、青白く明るくなってきた。