第 04 章「開戦」
第 02 節「時の覚醒(かくせい)」
夜明けの白い靄(もや)に包まれながら、彼は誇らしい気持ちで父を追いかけていた。
そのずっと向こうには、焦がれるほどに求め続けてきた、優しい母の後ろ姿が見える。
「父さんの言っていたことが分かったよ!
ぼくも、ついに“LIFE”を知ったんだ!!」
遠くから振り返って微笑む両親のところへ、彼は早く追いつきたい。
だが、走っても走っても、体が思うように動かないのだ。
やがて明るい朝の空は雷雨の鳴り渡る暗闇の世界へと変わり、彼は幼い少女に抱かれてまどろむ赤ん坊の頃の光景を見た気がした。
キャンプ・ファイアが音を立てて燃えている。
近くを流れる川の水が、雨の音に聞こえていたらしい。
少年ファラは目を覚ますと、最後に見た夢のことを思い出して塞ぎ込んでしまった。
その前の、とても幸せなひとときは、いつのことだったのか、どのような情景であったのかも忘れてしまっていた。
シェブロンとトーハが眠っている。
ノイだけは起きて、彼が目を覚ましたことに気が付いた。
「まだだいぶ時間があります。
眠っておいた方がいいですよ。」
「ノイさん、ずっと起きていたんですか?」
「私のことなら大丈夫。
慣れていますから。」
荷台の上で御者が休んでいた。
立ったまま眠っていた馬が、少し足踏みをして声を出した。