第 04 章「開戦」
第 01 節「憎悪の対立」
「ヱイユ、ソマには会ったのか?」
「まだだ。
あいつもおとなしく本を読んでいるよりは戦いの場に身を置きたい性質(たち)だが。
・・・今回は町にいてくれて助かってる。」
敵の数が計り知れないだけに、ヱイユも単独で戦うのとは違って、あまり無茶なことはできない。
また、灰竜アーダは人間を相手に戦わせるには加減が利かないのである。
反対にやられてしまうかもしれない。
狭い城内では、タフツァと同様、生身の体で戦う以外ないだろう。
二人は強力な球状ロニネを張り、その外側を「アンチ・トゥウィフ」のバリアで守って、砦に進入した。
階上からこちらを伺っていたマーラの一団は、次々に魔法攻撃を浴びせてくる。
だが敵からのトゥウィフは無効となり、他のあらゆる魔法は二人の魔力として吸収されていった。
「すごい吸収量だ。
僕の魔力の上限を越えてしまう。」
「余分な力はロニネの強化に使えばいい。
どんなに頑丈に張ったとしても気は抜くなよ。」
ソマなどは幼少の頃から、大地のエネルギーを取り出す方法や、敵の魔法力を大地に還す方法などを習い、身につけていた。
しかし敵の本拠地であることから、城塞テビマワ一帯の大地に多くのエネルギーを与えることは危険といえる。
LIFEの人々は滅多に敵の魔力を奪ったりはしないけれども、今回ばかりはやむを得ない。
吸収の魔法「テティムル」を使ってひたすら敵の魔法力を奪い尽くし、発動を不能にしていった。
ほとんどの相手にはロニネがかかっており、双方向からのトゥウィフは非振動系バリアで無効化してしまっているため、テティムルをかけるにも、タフツァが編み出した、グルガによる「魔法効果の消滅」をその都度用いる必要がある。
時々しぶとい術士はロニネを消されてもすぐにかけ直し、魔力が尽きれば大地から吸い上げるという戦法を見せた。
とはいえ二人は消費量を上回る魔力の供給という「無敵状態」で戦うことができたのである。
黒ローブの術士たちにしてみれば、なぜトゥウィフが失効してしまうのか全く理解できない。
「今後いつまでも同じ方法で楽に戦えると思うな。」
「ああ。
首領クラスは手強い。
すぐに対策を考えるだろう。」
城壁の外側には、内衛士団の第二隊、反対側に第四隊も到着し、テビマワは包囲されつつあった。
黒ローブの術士たちは、砦の地下階層からも次々と現れ、あらゆる攻撃を仕掛けてくる。
更に合成生物やメゼアラム(召喚)の使い手が参戦し始めると、術士が離れたところで魔獣を操るなど、倒しても倒しても次を呼び出されてしまい、数の多さに手が回りきらなくなってきた。
地上3階という外観に惑わされていたかもしれない。
すでにフロアは戦意喪失してうずくまる者や倒れたモンスターでいっぱいになっている。
仲間を介抱して地下へ連れていく者もいれば、満を持して現れる者も後を絶たない。
階下に退いた者が、吸い尽くされた魔力を回復してしまうことも考えられる。
「時間と、人数がいれば・・・!
いったん外に出よう。」
無制限に魔法が使える状態でも、特にタフツァは、もう体力が続かないことを認めざるを得なかった。