第 04 章「開戦」
第 01 節「憎悪の対立」
ここでタフツァは、敵が自ら変化することを得ている、その魔法を打ち消してやろうと思った。
前日に彼がルヴォン司隊に話したところの、“敵の戦意を喪失させる方法”もこれと同じ発想であり、闇の都市ザベラムが炎上した日、術士ケプカスとの対峙の中で見出された形式だった。
LIFEの術士としては異例のこととなるが、無と死滅を司る古代魔法「グルガ」を、応用しようというのである。
一行の中でも随一を誇るタフツァの発動の速度、魔法陣を立ち上げるスピードは、もう既に怪人ラモーへ向けて、未知の魔法を放っていた。
一瞬にして相手の生命を奪うというこの禁忌の古代魔法を、彼はこの時、どのように使ったのか。
「・・・何をした!?」
「お前がさっき言っていた通り、僕はシェブロン博士の教え子だ。
文献を焼いておきながら、“LIFE”の思想も知らないのか?
全ての魔法を、尊厳なる生命開花のために使うのさ。
お前たちが人殺しのために使ってきた、この『グルガ』でさえもな。」
暗黒色の魔法エネルギーが被術者を包んだかと思うと、やがて拡散して、怪人ラモーと呼ばれる男の正体を暴き出していく。
現れた姿は、タフツァが最初に見たものとも異なり、変化した後の姿とも異なっていた。
そこには、大きな目鼻口、矮小(わいしょう)な耳、小児かと思われる体躯に似つかわしくない、不恰好で巨大な頭を持った奇怪な男が、何が起きたのか分からずに立ち竦(すく)んでいた。