The story of "LIFE"

第 03 章「彷徨(ほうこう)」
第 03 節「思想戦」

第 13 話
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「巡査隊の方針は、マーラの術士を湖畔の屋敷から追い払うことでしょうに。
モアブルグはそれでいいかもしれない。
だが、悪魔の脅威に怯える、他の町々はどうします?
テビマワに拠点を残しておくことは、奴等に帰る場所を確保するのと同じこと。」
「その通りです。
悪魔結社マーラに活動を続けさせるわけにはいきません。
ただ、術士を捕縛するに留めることはできませんか?
生命を奪ってしまえばそれまでですが、たとえば労役に服するならば、悪しき者の力も、皆のために使うことができます。
改心を待つことだってできるのです。」

ルヴォンはニコチンが切れてきたようで、イラつき始めていた。

「攻撃の路線は変えられない。
無抵抗な者であれば牢に入れることも考えられるが、マーラの術士は攻撃的で、捕縛したとしても、どいつもこいつも脱走ばかりを考えるのだ。
“生への執着”とでも言おうか、それが恐ろしく強い。
ゴキブリだよ、まったく。」
「“生への執着”とは、いいことを言われた。
生きようとする力や意思、これは限りなく尊重するべきものです。
彼等の大半は、自分達がやろうとしていることの悲惨さを分からずに追従しているだけなのでは・・・。」
「そんなに肩を持たれるな。
黒ローブどものために、ご自分が犠牲になってやるおつもりでもあるまい。」
「僕は、マーラの活動を支持するわけでも、彼等のやり方に共感するものでもありません。
気になるのは、一人一人の術士がなぜ、飽くなき殺戮の方途の研究に明け暮れるのか、ということです。
その理由を知りたい。
もしかしたら、僕自身、『無能なる者』と生まれていたかもしれないのです。」

タフツァの両親は学者である。
誰でも、何かしら魔法の発露となるような能力を持って生まれてくるこの世界にあって、自らは魔法を使えない代わりに魔法の研究を本職としていたのが、「グルガの末裔」と呼ばれる人々だった。

能力を奪われ続けた恨みは、それを奪った社会への報復という反動のエネルギーとなって、彼等に「黒いローブ」を着させた。
そして15年前、死滅の魔法グルガの解放とともに力を取り戻した元学者たちが結束して設立したのが、「悪魔結社マーラ」だったのである。

ただし、全ての学者が社会を恨んでいたわけではなく、魔法力を持たない者が必ずしも「グルガの末裔」であるともいいきれない。
タフツァの両親は、学問として“LIFE”を研究していた夫妻で、グルガ解放後も魔法使いにはならなかった。

そんな中、シェブロンに師事したタフツァだけが、魔法への急速な目覚めを遂げている。

「LIFEは巡査隊の作戦に参加しますが、僕だけは第二隊に同行させてください。
新しい発動方法を見つけたのです。
僕が先頭に立ちましょう。
隊の皆さんは、僕が戦意喪失させた術士を捕縛するのに専念してください。」

ルヴォンは腕組みして険しい表情をしていたが、やがて頷いて立ち上がった。

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