The story of "LIFE"

第 03 章「彷徨(ほうこう)」
第 03 節「思想戦」

第 04 話
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半年ほど前、LIFEの一行がリザブーグ王国領メレナティレの城下町を訪れた時、機械の兵団による攻撃を受けたことがあった。

タフツァもその時、「闘神ヱイユ」の姿を見た。
ヱイユは上空からLIFEの一人一人をよく注視していて、危険な場所に現れては、彼らを護って戦った。
事実、一行は当初、戦闘を予期していなかっただけに、ヱイユの参戦がなければ、死傷者が出たかもしれない。

彼は通常、「灰竜アーダ」の姿で戦っていたが、やはり自分の体の方が動きやすいらしく、たびたび人間の姿に戻っては、剣や電撃を繰り出し、機械兵たちを撃退した。
また、アーダを召喚し、別のところで戦わせたりした。

ただ、シェブロン博士の前にだけは姿を現さなかった。

ザンダも、「闘神ヱイユ」の戦い方を見ている。
この少年がケプカスに会う前、「次はテダンを覚えたい」と言っていたのは、ヱイユの影響が大きかった。

また、襲撃を受けた時、フィヲは気が動転してしまって、本来ならば使えない魔法まで、ほとんど暴発に近い形で発動させていた。
彼女も、もしかするとヱイユのような素質を持っているのかもしれない。
しかしフィヲは、ヱイユを恐れていた。


タフツァとソマ、ヤエの3人で、火災の救命活動に参加するため、ザベラムへ引き返す道々、ケプカス戦後のいきさつが語られていた。

「それで、危ない所を、ヱイユに助けられたんだ。」

タフツァはこう言いながら、ソマの反応を気にしていた。
ヤエも、「ヱイユ」という名前には特別の響きを感じるらしかった。

「闘神ヱイユ。
本当に、私たちと同じ、人間なのでしょうか。」
「魔法力が飛び抜けているだけで、普通の人間よ。
眠っている時なんか無防備で、私でも勝てそうだったもの。」

ソマは、ヱイユのことをどう思っているのか。
幼い頃、共に“LIFE”の魔法教育を受けたため、「ライバル」のように見ている節もある。

反対にヱイユは、人間らしい一面としてソマを慕っており、その情はまだ子供のようで、純粋にして無垢なものだった。

「私もヱイユ君も両親がいないから、家族っていうか、そういうつながりを何より大事に思っていた。
“きょうだい”みたいなものかもしれない。
私がお姉さんで・・・。」

彼女には、4歳までの育て親にあたる夫妻があった。
生来の魔法力を引き出すため、初等教育として旅の魔法革命家であるシェブロン博士に入門し、以後、たびたび義父母の元に帰ることもあったが、15歳の時に義父が、19歳の時に義母が他界している。

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