The story of "LIFE"

第 03 章「彷徨(ほうこう)」
第 03 節「思想戦」

第 03 話
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等しく「魔法使い」といっても、一人一人、得意とする魔法(「Essential」の種類)はもとより、発動方法(「Operator」の組み合わせ)もまた、全く異なっている。
その上、「順方向」での発動を選ぶか、「逆方向」での発動を選ぶかは、誰に師事したかによって、大きく分かれていた。
術士によっては、この「順」・「逆」を、技術的に使い分ける者なども多く、LIFEの人々のように、何があろうとも「順方向」での発動を貫き通すといった例はなかった。

“理想”というものは、学問と書物の中にのみあって、現実は“理想”に反して汚く、そこで生きていくためには、多くの場合、いつか志した“理想”を、あっさりと捨てざるを得ないかもしれない。

けれども、要領よく「順」・「逆」の魔法を使い分けたとして、その影響は決して一時の発動に限るものではない。

一回の「逆方向」による発動は、その瞬間から精神を蝕み、もしこれに慣れてしまえば、「逆方向」という、「生命破壊」の発動自体に、何の抵抗も感じられなくなってしまうものだ。

本人の自覚の有無に関わらず、他者に対して放った「生命破壊」、つまり「生命活動の否定」という一念、及び行為は、必ず自身の生命活動をも、否定せずにはおかないのである。

「なぜ、これほどまでに『順方向』に執着を持つのか。
それは、『逆方向』の恐ろしさというものを、自らの目で見、自らの肌で感じた者になら、苦しいくらいよく理解できるものだ。
諸君には、自らの痛みを通して、他者の痛みをも知るという体験を、若い今の時だからこそ積んでいってもらいたいんだ。」

悪夢にうなされるザンダの姿から、タフツァとソマには、シェブロン博士のこの言葉が思い出されてならなかった。

「ザンダを、お願いできますか?
僕は、ザベラムに戻って、消火にあたっている隊員たちを手伝ってきます。」

馬車にはヴェサとフィヲが残り、御者に頼んで、そのままモアブルグへ引き返すことになった。
負傷したドガァも一緒である。
そしてソマとヤエは、タフツァと共に火災のザベラムへ急いだ。
もうすっかり夜は更けていたのだが、あまりの大火に、北の空が不気味なほど明るかった。

「森で、『合成獣』に襲われたの。
その時に私、魔法を使ってしまって。
ヤエさんから聞いてはいたのだけれど、彼等――『悪魔結社マーラ(ケプカスの一団)』には、現象の変化を気付きやすい術士がいて、そこで夕方、敵の一人に見つかってしまった・・・。」
「私は、名前だけ知っていました。
『怪人ラモー』と呼ばれている男です。
姿を見たのは初めてですが、小柄で、でもおそらくあれは、本当の姿ではないと思います。
ラモーの特技として、『ドファー』を巧みに使った『変装』があるのです。」

ヴェサとフィヲが遭遇した「奇術士ヨンド」もそうであったが、「マーラ」の術士は自己顕示欲が強く、自ら名乗る癖があった。
その点ケプカスは冷静な男で、他の術士たちとは別格といえるだろう。

「ヤエさんがケガをしていて、戦うわけにはいかないと思ったから、合成獣を払いながら逃げてきたの。」

よく逃げきれたな・・・、とタフツァは少し可笑しくもあり、ソマらしいとも思った。

彼女は「インツァラ」の込められた玉(爆弾)を使ってラモーを巻いてしまい、ヤエをかばいながら、後は町の方へまっすぐに走った。

途中、「一つ眼の野犬」が現れると、この際構うものかと、得意の「ドゥレタ(地震の魔法)」で追い返しながら、ついに振り切ってしまったのだ。

「だから、明日からはきっと大変になるわ。」

確かに、黒ローブの術士たちとの衝突は免れないだろう。
ケプカスも、きっと復讐に現れるにちがいない。

――「しかし、」とタフツァは思った。
3人は今、炎に包まれたザベラムを一望している。
敵方の本拠地とはいえ、これだけの惨事を前に、放っておくわけにはいかない。

巡査隊員の方へ駆け寄ると、防火用の装備を借りて、人命救助にあたるのだった。

火はとても手に負えないと、最初から見ていた。
この町ほど災害の対策を怠っている所は、おそらくなかっただろう。

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