The story of "LIFE"

第 03 章「彷徨(ほうこう)」
第 03 節「思想戦」

第 01 話
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生命の様相は、時々刻々と変化を続けた。

互いに行き来することのない、次元の異なった世界にあっても、“それ”は変わることなく存在した。

全ての生命は、奥底の祈りにおいて等しく“LIFE”の実現を願い、けれどもそれを自覚する者はまだなかった。

“LIFE”が言葉となり、哲学となり、行動規範となって、やがて人生となったのは、そう遅い時代になってからのことではない。
そして“LIFE”は、一つの生命からまた一つの生命へ、伝達される手段を得た。

しかしながら、生命の奥底の祈りと“LIFE”とを、同一視できる者は、まだごくわずかであったと言ってよい。


15年前の事変と今とで、世界はどのように変化しただろうか。

リザブーグの人々は過ちを悔いて、王国を立憲君主国と改めた。

悪魔に魅入られた人々も皆、正気を取り戻して市民となった。

ある国は、目論んでいたリザブーグ侵攻ができなくなった。

別のある国は、国境の緊張を解(ほぐ)した。

崩潰したLIFEは、再び術士の育成を始めた。

けれども、あまり人々の立ち寄らなくなった地域や、社会の裏側には、黒いローブを着た術士が増えつつあった。
古の塚が燃えた日に解き放たれた力は、依然としてまだ存在したのである。

魔法使いムヴィアが封印したものは、無と死滅を司る古代魔法「グルガ」ではなかった。

それならば、今なおリザブーグ王宮の地下で眠っているものは、一体何なのであろうか。

「ディ=ストゥラド」――数字の「6」を表すこの言葉は、かつて、ある国王の名として用いられたことがある。
強大な軍事力を誇った旧リザブーグ王国を、一時は壊滅に追い遣り、そして混乱からにわかに制圧を為し遂げてしまったそれは、果たして人間であったのか、あるいは怪物であったのか。

ただ一つ言えることは、彼女の最後の魔法が発動してから現在に至るまで、「ディ=ストゥラド」のような暴君が、世界から姿を消したということである。

つまり、それは支配と盲従という、人間が作り出した過ちの社会に潜在する「権力の魔性」であった。

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