第 03 章「彷徨(ほうこう)」
第 02 節「文献探し」
自由が利かない空中で回転し過ぎてダウンしたケプカスは、「ゾー」が解かれて地面に横たわっている。
念のため、追い討ちをかけるように、今度は下向きの「ゾー」がかけられた。
かなり強い重力場だったが、体が押し潰されない程度に加減されていた。
「ザンダとドガァは・・・?」
タフツァが町の方を見ると、黒ローブの男たちが、あらゆる凶器――刀・短剣・鎌・のこぎり・槍・斧、等々――を持って、恐る恐る、こちらへ向かってきていた。
「お前!
LIFEの術士か!!」
「よくも『モルパイェ=フューズ』を・・・!!」
彼らは、次から次から、まるで蜂の巣を突いたように現れ、増えていった。
「ケプカスがやられたぞー!!!」
「生きて帰すわけにはいかねえ。」
「あいつをとっちめろッ!!」
多くの者は意味も分からないで従っているらしい。
とは言っても、タフツァはケプカスとの対戦以上に危険を感じた。
見ると、彼よりも黒ローブの大群に近い側に、ドガァがいた。
ザンダを必死に起そうとしているが、起きないようだ。
タフツァは駆け寄って、そこで応戦するしかないと思った。
「ザンダ!
大丈夫か!!」
パシパシと頬に触れても、少年は目を覚まさない。
ドガァも、さっきの衝撃波で負傷していた。
『群集は何をしでかすか分からない。
一番危険な生き物と言える。
普通に受け返しても混乱を起すだろうし、誰かが転んだだけで大参事になりかねない。
本来ならばドガァに、駆け抜けて道を開いてもらいたいところだが・・・。』
やがて、すべもなく立ち尽くすタフツァたちを取り囲み、気の狂った男たちが目を光らせ、刃物を光らせた。
そして次々と振り上げられる武器・凶器が襲いかかろうとした。
だがさすがに、この時だけは、「彼」も手を下さざるを得なかったのだ。
一部始終を見ていた「闘神」は、世にも恐ろしい、黒い怪鳥の姿となって、遠雷の空を翼で覆った。
鳴り渡る音声(おんじょう)は、あの「悪魔」の叫びを遥かに凌駕(りょうが)して、黒ローブの男たちに、かつてない恐怖を与えた。
武器を持った群集は散り散りとなり、タフツァたちは事無きを得たと知って、驚いていた。