The story of "LIFE"

ケプカスの案内によって地下の「研究施設」へ向かったザンダは、ザベラムの町に魅了されたのと同じように、前を歩く得体の知れない人物にも、ぐいぐいと曳きつけられるものを感じた。

他の多くの術士を見ていても、暗闇では「松明」か「魔法杖」の灯かりを使う。
ケプカスのように「火の玉」を浮かべるような者は、過去に見たことがない。

いつしか少年は、歩き方まで真似していた。

「ほら、ここが私たちの研究施設だよ。」

目の前に広がったのは、大小の檻とその中の動物たち、そして厳(いか)つい「魔法陣」の並ぶ、薄暗い倉庫のような場所だった。
ずっと先の方まで、いくつもの部屋が続いているようだ。

ザンダはなぜか、頭がふらふらしてきた。
しかし、異様に気分は高揚していた。

「おれにもこの、『モルパイェ＝フューズ』を見せてくれよ！」

彼は町でもらったビラを指して言った。

「ふっふっふ、こっちにあるよ･･･。」

ケプカスの口調の変化に気付いたのはドガァだけだった。

連れて来られたのは、この世のものとは思えない、そして何の生き物であるかも分からない、恐ろしい絶叫が響き渡る部屋だった。

好奇心の強いザンダも、「悪魔」の姿を見て、一瞬、気を失いかけた。

「素晴らしいだろう？
これが『モルパイェ＝フューズ』だよ。」
「す、すごいよ、ね？
か、かっこい･･･。」

不思議と、ザンダは悲しくもないのに、涙が溢れてきた。
放心状態になって倒れそうになる少年を、ドガァが支えた。

「今日はザンダ君の他に、素晴らしいお客さんがお見えだ。
･･･ひとつ、『モルパイェ＝フューズ』の相手でもしてもらいましょう。」

禁術を施された、巨大な檻の入り口が、轟々と開け放たれていった。
ドガァは身構えた。

「『ライオン』か･･･、私の先祖は、奴らの仲間に食い殺されたんですよ。
無敵の『悪魔使い』であったのに。
ふっふっふ。」

ドガァはザンダを背に乗せると、ふいに元来た方向へ走った。
このままでは全滅すると知ったためである。

ザンダは泣きながら、必死にドガァの鬣（たてがみ）にしがみついていた。
かなりの好戦的な性格であったが、今は完全に戦意喪失の状態だった。