The story of "LIFE"

第 03 章「彷徨(ほうこう)」
第 02 節「文献探し」

第 12 話
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一方、夜のうちに部屋を抜け出したザンダとドガァは、早速ケプカスに会おうと、道標の案内に沿って街道を西へ向かい、「闇の都市ザベラム」を目指して歩いていた。
途中の森で様々な獣に遭遇したが、元よりライオンのドガァに敵対する動物などなく、ザンダも冒険気分で魔法を発したりしたので、難なく切り抜けてしまった。

そして明け方のまだ薄暗い頃、森を出た田舎道で、一人の商人と出会った。

大きな荷車に、武器やら防具やら、中には鳥かごや檻(おり)のようなものまで積まれている。
彼は先程ザベラムを発って、昼にはモアブルグへ着くつもりらしい。

「君もザベラムへ行くのか?
なら気をつけたほうがいい。
以前とは異なり、人々の様子がどうもおかしいようだ。
思うにあの町は、住む人まで変わってしまったのではないだろうか。」
「へえー、面白そうじゃん。
そんなことより、おじさん、『ケプカス』って人知ってるかい?」
「ああ、知っているとも。
各地で捕まえた珍獣を、いくつも買ってくれたよ。
なかなか人あたりのいい、話のできる人物だった。」
「やっぱりな!
・・・ますます会ってみたくなった。
それじゃあ、おれ行くね。」

こう言ってザンダは商人と別れた。

「世の中にそんな悪い奴がいるモンか!
ケプカスさん、きっとすごい魔法使いだぜ。
おれ、いろいろ教えてもらうんだ。
次は『テダン』を覚えたいな。」

ドガァは何か思慮するようにちらと少年の顔を見たが、ザンダの意思を尊重するようにして、付き従って歩いていった。

あたりは曇り空の夜明けを迎えて、まだ人影は見えないが、冷たい風だけが強く吹いて枯れ草や木々を鳴らしていた。


さて、午前も日が高くなった頃、タフツァはザンダたちを探して、町中をくまなく歩き回っていた。
何分、夜中の出来事だったので、少年を見かけた者もなく、彼はほとんど途方に暮れてしまった。
そうする間に何度もソマとヤエに会った。

「まだ手掛かりもないの!?
あの子、そんなに遠くへ行ったのかしら・・・?」
「ケプカスに会うと言っていたからな、まさかそこまで一人で計画するとは・・・。」

「ザベラムへ行くなら、必ず変装をしてください。
また、大勢で行けば逆に怪しまれてしまいます。
今あそこへ出入りできるのは、旅の商人くらいなものですから・・・。」
「分かりました。
僕が商人の装(よそお)いで行ってきます。
追いつくまで、無事でいてくれよ・・・!!」
「馬車を手配して行くといいでしょう。
町外れの厩(うまや)に頼めば、貸してくれます。」

タフツァが馬小屋の前まで来た時、明け方ザンダとすれ違った商人が、ちょうどモアブルグへ到着し、顔馴染の馬主を訪ねてきたところであった。
馬主が不在であったため、二人は自然と声をかけ合っていた。

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