The story of "LIFE"

第 03 章「彷徨(ほうこう)」
第 02 節「文献探し」

第 10 話
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突如姿を現したのは、頭巾を被った醜い小男で、多少、警戒気味にこちらへ近づきながら、何か言いたそうにフィヲたちを見ている。

「い、いまのは何だ?
お前らもあれか、『マーラ』の新入りか?
・・・それにしちゃあよく、こんな若い女がいたもんだ。」
「『マーラ』だって?
あんたがケプカスかい?」
「いいや、オレはケプカスじゃねえ。
・・・ケプカスを知らないってことは、同穴のモンじゃねえな。」
「『同穴』とはまた、汚い言葉をつかうじゃないか。
するとなんだい、あんたはケプカスの仲間ってわけだね?」
「そうさ。
『奇術士ヨンド』とは、このオレ様のことだ。
まさか、お前らは・・・!?」
「あっはっは、不良術士め!
・・・どれ、一つグルガの亜流でも、見せてもらおうじゃないか!!」
「おばあちゃん、気をつけて!
この人、普通の術士じゃないわ!!」

男は、近くにあった大木を選んで手を触れ、それを何と腕の力だけで倒してしまった。
高くまで枝を蓄え繁った大木は、ギシギシと音を立てながらヴェサたちの方へと倒れかかる。

大木は男の魔法でエネルギーと水分を奪い尽くされてしまったようだ。
予想外の攻撃である。

「おばあちゃん、伏せて!」

魔法力に優れているとはいえ、年老いて動きの鈍いヴェサは、かわすことができない。
術の応戦ならば、いくらでも受け返せたであろう。

そのことを知っているフィヲは、老婆の前に飛び出して、樫でできた杖を両手に身構えた。
到底、受けとめられるだけの力などない。

「フィヲ、危ない!
そこをどくんだよ!!」

奇術士ヨンドは様子を覗っていたが、フィヲの動きを見て少し狼狽し始めた。
なぜか、とてもいやな気分になったのである。

ほどなく、大木が二人を押し潰す勢いでのしかかった時、フィヲが魔法を使った。

「小さくなれ!」

倒れかかるは巨大な樹木、守るはか細い少女の魔法杖。

その二本の木と木がぶつかり合った瞬間、大木は木の枝ほどの大きさになり、フィヲの杖に弾かれてヨンドの頭に当たっていた。

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