第 03 章「彷徨(ほうこう)」
第 01 節「ヱイユ」
以前、LIFEの一行がメレナティレで戦いを余儀なくされていた時、ヱイユは博士らの前に姿こそ現さなかったものの、同じ城下で攻防戦に加わっていた。
一行を追跡する機械兵の勢力を狙撃したり、魔獣の姿になって引き付けるなど、陰での応戦だったといえる。
『博士にお会いすることはまだできない。
しかし・・・。』
十五年前、自らの未熟によってパナを失った、彼はそう思っていたのである。
「俺に“LIFE”を起こすだけの力はない。
しかし、あいつにならできるはずだ。
パナさんの血を引く、あの子供になら・・・!」
決戦の日、崩れ落ちようする王宮の中、パナが発動した“LIFE”によって正気を取り戻したヱイユは、偶然にもツィクターと幼いファラとを見つけ、二人を抱えたまま、魔法力を解放して郊外まで脱出した。
彼は力を使い果たしてしまっていたが、自責の念からか、すぐにその場を立ち去って行ったのである。
そこから、ツィクターとファラの旅が始まった。
ヱイユの修行が始まった。
LIFEの復興が始まった。
今またモアブルグ地方へ向かうヱイユには、ソマとの再会が予測できた。
同じように、彼は近く、魔法使いファラとの再会もまた、果たせるに違いないと確信するのだった。
灰色の竜は、若く美しい瞳に活力を漲(みなぎ)らせながら、夕日の映える海峡を越えていった。
対岸には、すでに古都アミュ=ロヴァの町並みが見え始めている。
「不思議だ。
ソマに引き寄せられているようだ。
きっと、この先にも激しい戦いが待っているのだろう。
・・・“LIFE”か、本当に楽しみだ!!」
ヱイユがモアブルグに着いたのは、日が沈んで、町が活気付く頃だった。