第 03 章「彷徨(ほうこう)」
第 01 節「ヱイユ」
「モアブルグ」はリザブーグ王国よりも北方にあり、「ヤコハ=ディ=サホ」の辺りから見れば東に位置する。
そこが、タフツァを中心者として組んだパーティの目的地である。
シェブロンは今回、リザブーグ王国領「ディスマ」を囲む五つの古代遺跡を、タフツァやソマ、フィヲやザンダなどの若い魔法使いたちに見せておくつもりで旅をしてきた。
けれども、「南西の塚」から、「十五年前に焼失した塚」を経て、第三の塚がある「王国領メレナティレ」の城下町まで来た時に、彼らは一度、「機械兵団」による攻撃を受けていた。
憲法を立てて国王の権力を制限したこの国としてみれば、明らかに不穏な動きである。
次いで、思いがけなくファラと出会った「港町フスカ」でも、メレナティレ同様の「機械兵」に遭遇した。
なぜ、中立自由市国家の南端にあたるフスカにまで、リザブーグの機械兵たちが進出し得たのか。
LIFEの責任者シェブロンは、まず王国の動きを監視する必要を感じていた。
そこには武力衝突の危険性も否めない。
ならば、戦闘の経験が浅いフィヲやザンダを連れていくわけにはいかなかった。
また、不本意ながら、彼らにもいずれは戦力として戦ってもらわねばなるまい。
あるいは絶大な権勢を誇るリザブーグ王国が、他の国々をも巻き込み、近く戦乱を引き起こさないとも限らない。
すると、軍事力に対抗するためにも、究極の発動形式である“LIFE”を、一刻も早く完成させておきたかった。
パーティを二つに分けたのは、つまりそのような必要からであった。
いずれLIFEの主力となるべきタフツァには責任を持たせ、これをソマに補佐させる。
フィヲやザンダを育てるにも良い機会となる。
シェブロンは、古くから魔法文明が発達した「モアブルグ地方」へと彼らを向かわせることが、「LIFE」の研究を進展させ、戦力の育成にもつながってゆくだろうと考えた。