The story of "LIFE"

第 03 章「彷徨(ほうこう)」
第 01 節「ヱイユ」

第 01 話
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真昼の薄暗い空に、一筋の雲の切れ間を残して、一匹の竜が飛び去っていく。

彼方にそびえる山々は限りなく険しく、威圧的にさえ思われた。

獣たちが群れを成し、あるいは単独で、住みかや縄張を持つように、大空にも、どうやら「所有」というものがあるらしい。

乾燥した草原地帯へさしかかると、そこには獰猛(どうもう)な鳥達が住んでおり、彼等の空を侵す「外敵」は、即座に取り巻かれ、標的にされてしまう。

雲を突き抜けた上空にあっては、真っ赤な肌を持つ、荒荒しい竜神たちの領空へと、踏み入ることもある。

それに加え、ドラゴンのような巨大生物にも、「天敵」というものが存在する。
すなわち、昔から一部の神話や民話に語り伝えられているところの、「ガルーダ」あるいは「迦楼羅(かるら)」・「金翅鳥(こんじちょう)」などと呼ばれる、天球ほどの巨体を有した、「鳥」である。

かの若き灰色の竜は、一つ所に止(とど)まることがなく、まるで旅人のように、各地を彷徨(ほうこう)して暮らしていた。

元来の美しい瞳を持ちながら、ひとたび戦闘ともなれば、他に並ぶ者がない。
迫り来る「地獄の猛者(もさ)」ともいうべき追手を次々と蹴散らし、強敵を打ち破ること、伝説の「阿修羅王」や「摩利支天(まりしてん)」の如く、時に容貌を変じて魔獣と現じ、風となり、影となり、人となって、自在に暗雲を集めること雷神の如し。

――人々はその影を見ては「闘神ヱイユ」と呼んで、恐れ慄(おのの)いていた。

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