The story of "LIFE"

第 02 章「連動」
第 02 節「機は熟さず」

第 20 話
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大地震に目を醒ましたパナは、傷つきよろめきながらも起き上がり、少年の居場所を探した。

「いけない・・・。
ヱイユくんをあのままにしては・・・。」
「まだ歩くのか、ムヴィアよ!
しかし、小僧は渡さぬぞ。
・・・この体も老いていてな。
わしは、あの新しい体に憑くつもりじゃ。
・・・誰人にも邪魔はさせぬ!!」

突然パナは、めまいにも似た体の重みを感じ、地に伏してしまった。

「ディ=ストゥラド」の強力な「ゾー」が、彼女の動きを封じたのである。

「思い通りにはさせないわ・・・!
・・・『ディ=ストゥラド』、これが最後の勝負よ。
私の“LIFE”をよけて、ヱイユくんに手出しができるかしら・・・?」

パナの言葉が終わり、「ディ=ストゥラド」がヱイユに歩み寄ろうとした、その時である。

王を囲む一帯に、巨大な炎と竜巻、地から湧き出ずる水柱と赤いマグマが現れ、虹色の光がそれらの間を駆け巡った。

ほぼ同時に、彼は足元へ体が埋まるほどに引きずり込まれ、やがて辺りは極限の冷気に包まれていった。

「な、何をする気だ・・・?
ま、まさか!?」
「そう、これが私の“LIFE”、『封印』よ。
数百年前にあなたを封じたのと同じ結界を、もう一度ここに作ってあげましょう。」

「あらゆる物質が眠る低温」にまで達すると、魔法陣の内側の空間が急速に歪んできて、今度は先に彼女が使ったのと同じ、球状の「ゾー」が姿を現した。

「これで、終わりだわ・・・!!」


「ロニネ・・・

フアラ・・・

ヰフ・・・・・・



キュキュラ・・・・・・」




その瞬間、何か一つの効力が失われたような感覚に、全てが包まれていった。

宮殿がにわかに崩れ落ち、あの「祭壇」のあった部屋は、地下の最下層まで沈んで消えた。


「LIFE」の人々も皆、散り散りになってしまった。

廃墟に生を得た、幼き少女と老技師。

瀕死の壮年を抱え、辛うじて地下から脱した騎士。


そして、あの父子の姿は?


どこからともなく、まだ幼いはずの、あの少年の声が、灰色の雲の渦巻く天高く、遠く、普(あまね)く響き渡っていった。

『もう二度と、敗れることは許されない。
我は、生の鼓動を脅かす一切の悪魔と対決する。
悉(ことごと)く滅ぼし尽くすその日まで、戦いは終わることがない。』

実にこの日の誓いこそが、一人の少年をして護法の阿修羅たらしめる、「本因」となっていったのである。

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