第 02 章「連動」
第 02 節「機は熟さず」
「ただの『スライム』ではない。
魔法を寄せ付けない様々な禁術が、全身に施されているようだ。
・・・それにしても、あの大きさでは強行突破ともいかないな。」
「わたしが斬りつけて分裂させましょう。」
「『スライム』は飛び散って敵を攻撃する。
破片にも触れないよう、よくよく隙を見て倒すんだ。」
ノイの剣撃で、骨無しの怪物は三体ほどに分裂・増殖した。
シェブロンは「トゥウィフ」を敵全体にかけ、「ロニネ」を応用したと思われる禁術もろとも通路の奥まで吹き飛ばしてしまった。
「最後は氷漬けがよかろう。」
不定形のモンスターは、何度凍りついても再生できる。
シェブロンは、どのような場合でも生命活動を阻害しない。
「ザイア(氷結)」で動きを封じるにとどめて、出口の階段へ進もうとした。
するとそこへ、「あの男」――ヨムニフが、つかつかと杖を構えて現れた。
「これはこれはシェブロン博士!
罠と知りながらも、よくぞ来られた。
他の連中は上で苦戦しているらしいが、・・・あなたにはここで手合わせ願いますよ。
ノイさんは、特別にお通ししましょう。
あの坊やは国王のお気に入りでね。
早くしないと、『邪神』に生まれ変わってしまうだろうから。
ハッハッハ!!」
「貴様・・・!!」
「ノイくん、ここは任せて、先へ行きたまえ。
ツィクターさんたちと合流するんだ。
そして、ヱイユくんを探してほしい。」
「博士、それはいけません!!
わたしもここで戦います。
今すぐ奴をし止めさせてください!!」
「相当長引くぞ。
もし間に合わなければ、ヱイユくんの力は魔性に支配され、悪用されてしまう。
それに、魔法の応戦なら、私一人で十分だ。」
ノイは今ここで何もできないことの口惜しさに、拳を握り締めて全身を震わせていたが、やがて意を決したように頷いた。
「・・・分かりました、博士。
皆のためにも、どうか生きてください!!」
「そうだ。
敵の兵士といえども、決して死なせてはならない。
また仮に、国王と相見えるようになったとしてもだよ。
・・・よろしく頼む。」
ノイは博士に一礼すると、ヨムニフを鋭く睨みつけ、足早に王宮へと駈け上がっていった。