第 02 章「連動」
第 02 節「機は熟さず」
傷を被(こうむ)ったネマーダは、先刻(せんこく)の冷静さを失っていた。
「ただでは済まさぬぞ・・・。」
彼は「ロニネ」で身を覆(おお)い、真っすぐにツィクターを指差した。
「これで終わりだ!!」
「いけない、あれは生命破壊の構え。
早く詠唱(えいしょう)を止(と)めないと!!」
「パナ、手出しはいらない・・・!」
ネマーダの眼前(がんぜん)に、まさに魔法陣が浮かび上がろうとする時、「グルガ」の発動が始まると思われたその瞬間、結界越しに術士が突き飛ばされたように見えた。
ツィクターの剣閃(けんせん)は弧(こ)を描くように広がって走り、敵の「ロニネ」が消し飛んで、彼の強烈な「タックル」が決まったのである。
「今のは、『トゥウィフ』みたいだったけど・・・。」
「ハッハッ、わたしの『奥の手』だよ!!
・・・もう勝負あったから、やつに『ゾー』でもかけておいてくれ。」
王国兵団による襲撃の、第一波は静まった。
倒された敵方(てきかた)は皆、茫然(ぼうぜん)としていたが、しばらくして、兵士と思われる数人が駈け寄ってきた。
「特別警戒兵」の装備のうち、堅(かた)苦しい感じのする「ヘルム」や「アーマー」を脱ぎ捨てた、まだ若い連中である。
「あなたたちはすごい!!
これなら、もしかするとやれるかもしれない・・・。
僕も、一緒に行きたいのですが?」
「じ、自分は、ぜひ剣術のご指南(しなん)をいただきたく、馳(は)せ参じた次第であります!!」
「国王のやり方は、近いうちに必ず国を滅ぼすでしょう。
王宮を攻めるなら、わたしも連れていってください!」
「魔法使いの妻と子供が、城へ連れ去られたのです。
自分には魔力がありませんが、みなさんを護衛(ごえい)させていただきますので・・・!」
皆、人の良さそうな者ばかりであった。
ツィクターとノイが半年以上もかけて「協力者」を探し歩いた苦労は、ようやく報(むく)われたと言ってよい。
ヨムニフを追った三人を除く「LIFE」の一行は、彼ら「無名の兵士たち」を味方につけながら、「魔性(ましょう)のリザブーグ宮殿」を目指し、意気も高く行軍(こうぐん)するのだった。