The story of "LIFE"

第 02 章「連動」
第 02 節「機は熟さず」

第 05 話
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「地下進撃」の情報を得た晩も、「449街区」では会議が行なわれた。
ここには、まだ幼いヱイユとソマも参加していた。

「えっ!
逃げるって、どうしてだよ!?」

好戦的なヱイユにとって、「一時退避(たいひ)」の指示が腑(ふ)に落ちなかったらしい。
「LIFE」の中心人物であるシェブロンは、こう話を続けた。

「われわれの目的は、国家の転覆(てんぷく)でも、国王の暗殺でもない。
あの『封印』が解かれたことによって、魔性(ましょう)に支配された人々の目を、もう一度開かせることにある。
それにはまず、国王『ディ=ストゥラド』のやり方を改めさせる必要があるんだ。
このままいけば、遠征で多くの若者が命を落とすだろう。
また、われわれが軍隊と正面衝突することは無益(むえき)といえる。
国に盲従(もうじゅう)した兵士たちを目覚めさせるという、根本目的に反するからだ。
今は国外へ逃れて、しばらく機会を待つ以外ない。
・・・まだ希望が持てる限り、ヱイユくんも決して、無謀(むぼう)なことをしてはならないよ。」

常々シェブロンに敬服(けいふく)していたノイは、「もっともだ」と言わんばかりに頷(うなづ)き、何とはなしに少しテーブルを立った。

そしてふと、となりの部屋から聞こえてくる、かすかな「物音」へと注意を移して、じっと耳を傾けていた。
以前、隠し通路だったこの部屋は、トーハと技師仲間とで完全に封鎖したはずである。

「待って!
確かに人の気配がするわ。
私に、まかせてください。」

パナは、愛用の「変わった形の杖」に何かの魔法をかけた後、スッと扉を開いた。
ツィクターも、近くに寄った。

「いけない、これは『グルガ』です!
それにあの男――ヨムニフの気配がまだ残っている・・・!!
トーハさんたちに塞(ふさ)いでもらった壁が、完全に蒸発してしまっているの。」

それを聞くと、ヱイユは黒い靄(もや)の先を鋭く睨(にら)み付けながら、まるで人が変わったかのような形相(ぎょうそう)で、ガタガタと全身を震わせていた。

「あいつめ、待ってろよ・・・!!」

少年はこう荒荒しく叫び、いきり立ったように剣を引き抜くと、まだ黒煙(こくえん)が立ちこめる「通路」へと駈(か)け出して行ってしまった。

「ノイくん、彼が心配だ。
後を追ってほしい。
・・・わたしも行こう。」
「分かりました。」

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