第 02 章「連動」
第 02 節「機は熟さず」
「軽食屋」と通じるようになった「LIFE」は、王国兵団の動向をつぶさに知ることができた。
ツィクターとノイは、半ば楽しみながら自分たちの噂話を聞いて過ごしていた。
「奴ら、近衛(このえ)兵を相手にしても全く退(ひ)けをとらないじゃないか。」
「わたしもなるべくなら、手合わせしたくないものだな。」
「お前、知らんのか?
奴らめ、決して命は取らんのだそうだ。
ちゃんと働いているようにさえ見せておれば、上からも何らドヤされんで済むだろう。」
「国賊(こくぞく)探し」が絶対の命令であるとはいえ、兵士たちの意気とはこの程度のものだった。
もとより街の所々に入り口を持つ「LIFE」の隠れ家である。
日に数回の出入りにも深く注意を払っていたため、「アイディールの軽食屋」と「LIFE」の関わりは王国側に知られることなく、単調に時が流れていった。
そして、「あの男」が「LIFE」を去ってから、早くも2ケ月が過ぎた。
ある日のこと、店に屯(たむろ)す兵士が次のような情報を漏(も)らした。
久しく安穏(あんのん)な生活を送っていただけに、これは「LIFE」の彼らにとって、一層恐ろしい「宣告」と響いたに違いない。
「我らが仇敵(きゅうてき)は、『地下』に潜(ひそ)んでいるらしいぞ。
今回の作戦は町中の地下室を根こそぎにするというものだそうだ。」
「それだけじゃない。
街路の粛正(しゅくせい)には、『鉄甲(てっこう)兵』とかいう機械のバケモノを導入するんだと。
これで奴らもおしまいだな。」
兵士らは、見慣れない制服を身にまとっていた。
街路に「特別警戒兵」の姿も減ってきて、ツィクターやノイが返って目立つようになった。
この新手(あらて)の王国騎士たちを「魔導(まどう)兵」といい、彼らこそ「剣術」と「魔力」とで兵団から抜擢(ばってき)された、最強の戦士たちであった。