The story of "LIFE"

第 02 章「連動」
第 02 節「機は熟さず」

第 03 話
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旧王国滅亡の混乱期、リザブーグ城下には「アイディール」という名前の「結社」が存在し、地下などに隠れて「反王制」の活動を行なっていた。

元々、憲兵(けんぺい)の武力による抑圧(よくあつ)を受けて、かなり過激なやり方をも用いてきた革命者たちの集まりであったが、内部の争いと、王国復興時の「悪魔的手法」によって、完全に潰(つい)えてしまっていた。
その後、残った人々は、城下町で最も入り組んだ街区の一郭(いっかく)に、「軽食屋」と称する店を開いて生活をつないだ。
彼らは大した野心も持たずに暮らしていたが、店は自然と王国内外の膨大(ぼうだい)な情報がやり取りされる、「野心家の根城(ねじろ)」となっていった。

しかし、徴兵(ちょうへい)と強化される警戒体制の中、「軽食屋」へ出入りする「野心家たち」の数は激減し、代わりに兵士たちが店を占拠(せんきょ)してしまった。

これを機に「アイディールの軽食屋」は、国内の情報に限っては、今まで以上に多くやり取りされる場となったのである。

「特別警戒兵」の制服と鎧に身を包んだツィクターとノイもまた、ここをよく訪れた。
顔見知りの元・同僚たちと出会わぬうちは、「警戒兵」に成り済ますのである。

彼らが剣を握って戦うのは、見つかってから日が暮れる頃までであった。

また、本物の警戒兵たちは常に横暴(おうぼう)だったのに対し、二人が礼儀を重んじて店の者たちと関わり、あるいは口説いていったため、「LIFE」は次第に、ここでの信頼を広げていくこととなる。

こうして協力の得られそうな人物を見つけると、彼らは「LIFE」の会議で皆に報告し、主にはトーハがそこへ出向いて交渉に当たっていた。
彼は徴兵(ちょうへい)の対象とならない年齢に達しており、顔も全くと言っていいほど知られていなかったのである。

例の「勅書(ちょくしょ)」で国を挙げて追われる身となったシェブロンや、「古代魔法グルガ」を封印できる唯一の術士として知られるパナなどは、必然と表立った動きを制限されていた。

それでトーハの出る幕となったわけだが、既出(きしゅつ)の「新しい集合場所」というのが、実は「アイディールの軽食屋」の地下室だったのである。

また彼は、技師仲間の協力も得て、「449街区」へと連なっていた幾つかの隠し通路を封鎖し、この「軽食屋」とつなぐ新たな通路を完成させていた。

「間諜(スパイ)」――何食わぬ顔で協力者を装っていた「あの男」に、隠れ家の場所を知られてしまっていたからである。

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