第 02 章「連動」
第 02 節「機は熟さず」
LIFEの協力者探しは、「王国特別警戒兵」との激しい市街戦へと化していた。
「裏切り者」であるツィクターやノイが表に立って、非武装の仲間たちを護衛するのである。
「わたしは、あの暗夜の攻防よりやりやすくていいと思うが、ノイくんは?」
「同感です。」
新たに結成された警戒兵団も、王国騎士に伝統の剣術をそのまま流用していたために、二人はあらゆる攻撃を見切って城下町を駆けた。
これには、「隠れ家」を見つけさせないための「時間稼ぎ」という意味もあった。
日を追って執拗(しつよう)に強められる監視のもと、あの「449街区」では、幼いソマとヱイユに対する「授業」が行なわれていた。
小さな魔法使いたちの、「養分」を求め吸収しようとするエネルギーは一気に開放された。
この世界に、教育能力として「LIFE」を超える機関を求めることは、おそらく困難であったろう。
「ソマちゃん、『ドゥレタ』はね、地震を起すだけの魔法じゃないのよ。
あなたは女の子だから、攻撃して相手を怒らせる戦法ではだめ。
今日は、大地からエネルギーを引き出す発動法を勉強しましょう。」
「パ=ムヴィア=ナ」、というのが彼女の本名だった。
子供たちは、この若い母親になついていた。
「授業」でも特に「演習」には、「ロニネ」の結界を張った方陣が使われる。
ヱイユの「演習」には、シェブロンが当たることになっていた。
この少年はまだ力のコントロールが利かず、エネルギーが暴発(ぼうはつ)して物凄(すご)い音を立てるため、技術者トーハも驚いて、「実験室」から飛び出してきた。
「なんだ、ぼうず。
『テダン(雷)』が使えるなら、もっと早く言わんか。
ここには『ググ(磁力)』の術士しかいないと思って、『磁電変換』の機器を作ってしまったじゃないか。」
「いや、トーハさんの発明に協力してもらうには、もう少しのトレーニングが必要だと思いますが・・・。」
このように、二人の騎士たちにとっても魔法使いの彼らにとっても、この頃が最も充実した日々であったといえるに違いない。
やがて訪れる激しい衝突を覚悟しない者はなかったが、同様に、「全ての過去が『今の瞬間』へと連動している」という、一種不可思議な感覚を、誰一人として疑うことがなかった。
また、パナにとっては夕刻過ぎに夫の帰りを待つわずかの時間が、この上ない楽しみであり、喜びであった。
あまり言葉も交わさないまま、彼の帰りを待つ「もう一人」によって、いわゆる「剣の稽古(けいこ)」のために引き離されてしまうのが常であったけれども、彼女は赤ん坊を抱きながら、時間の経(た)つのも忘れてチャンバラ遊びに見入るのだった。
「先生!
俺もツィクターさんやノイと一緒に、上で戦うよ。
あいつをぶちのめさないと、後で大変なことになるから!」
「落ち付いて。
もう少し、もう少し待つんだ。」