第 02 章「連動」
第 02 節「機は熟さず」
人々はかつて、地上に「おとぎの国」の出現を願った。
けれどもこの同じ世界には、次のような別の声が絶えず発せられていた。
「目の前の悲惨と害悪とに背を向ける、あまりにも臆病なる残酷よ!」
「陽もなく温度もない墓場へと葬り去られた、行き場のない魂の苦痛を見よ!」
やがて高度な魔法技術と、彼らの尽きることのない権威欲が、「封印」という「奇跡」をも生み出した。
それは、太古の時より口を開いていた「地下の深淵(しんえん)」を、全く覆(おお)い隠すのに成功した。
すなわち、この世に途方もない深さの「断絶」が姿を現したのである。
「死滅の古代魔法グルガ」は、決して消失してしまったのではない。
姿を変えて、「おとぎの国」の「裏側」に、常に存在していたと言える。
事実、「地下世界」には、「魔法使い」の姿をした「学者」や、「人殺し」が数多く住んでいた。
ここから察するに、「万物」と「現象」とを構成する要素としての「魔法」には、いかに人智を結集した「奇跡」と言えども遥かに手の届かないほどの地位が与えられているのだろう。