The story of "LIFE"

第 02 章「連動」
第 01 節「未来の珠(たま)」

第 09 話
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古来、戦乱が絶えなかったリザブーグの地では、前にも触れたように「封印」と呼ばれる魔法陣の開発が、「秘密裏(り)」で行なわれる時代があった。
それというのも、この「封印」とは、「ある魔法」を世界から消し去ってしまおうとする試(こころ)みであり、もしも知れ渡れば術士の反乱を引き起こすことが目に見えていたからである。

「封印」とは「一つの魔法」を消し去るに止(とど)まらず、「一つの危険勢力」をも葬(ほうむ)り去る計画だったといえよう。

かくして、「無」と「死滅」を司(つかさど)る古代魔法「グルガ」は、六人の術士たちによる犠牲を経て、その後数百年に渡り、世界から姿を消すこととなる。
「無能なる者」と成(な)って処刑された、「術士」らとともに・・・。

しかし、この国家を挙げた儀式が原因となって、予期せぬ別の「幸(こう)」と「不幸」とが、まるで「死神」のごとく付きまとってくることには、後世まで誰も気づかなかった。

すなわち、万物の構成要素としての「魔法」が一つ失われたため、人々や世界にも異変を来(きた)し始めたのである。

ここで言う「幸」とは、万人の「心」に潜(ひそ)む「悪魔」たちが、「グルガ」とともに封印されたことを指す。

更に「不幸」とは、本来「グルガ」を潜在能力とするはずの、後世に生きる幾多(いくた)の術士たちが、人間社会のどん底に「呪いの深淵(しんえん)」を築いていったことを指(さ)している。

人間は本来、我が内なる「悪魔」との闘争の果てにのみ、「最後の勝敗」を決することができると言えよう。
それならば、「封印」によって人々は、「自己の勝利の証」を手にする可能性すら、どこかに忘れてきた形となったのである。

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