The story of "LIFE"

第 02 章「連動」
第 01 節「未来の珠(たま)」

第 05 話
前へ 戻る 次へ

翌朝、久しく見ない日が昇った。

以前人々が目にしていたものより、はるかに大きな太陽だった。

そして、ゆうべまでの空を覆った「暗黒」はすっかり去って、気持ちが悪いほどの晴天が広がっていた。

城下は活気を取り戻し、往来(おうらい)する若者たちは何かに熱狂したような興奮を示していた。
どの顔も新参者(しんざんもの)ばかりである。

街の所々には、醜悪(しゅうあく)な「着ぐるみ」をまとった連中が、卑猥(ひわい)な歌をうたいながら悪ふざけをしてまわっており、そのたびに奇声(きせい)交じりの笑いが起こった。

この日、新生リザブーグ王国にとって最初の、「建国記念日」と定められたのである。

昼下がりからは、「パレード」と称して、皆、思い思いの服装で行進がはじまっていた。

どの家の窓も全て開け放たれ、若い娘たちがわれ先にと群集へ飛び込んでいく。
その後を、洒落者(しゃれもの)の男たちが追いかけていった。

照りつける日差しがあまりに強いので、彼らは薄着になってはしゃぎ歩いた。

ようやく陽が傾く頃までには、城下は人で溢(あふ)れかえり、もはやそれは行進ではなかった。

どの街路も若者ばかりで埋め尽くされていたが、たまにひょうきんな中年男がもてはやされていた。
他方で、人気(ひとけ)の少ない路地裏では、頻繁(ひんぱん)に喧嘩(けんか)が起こっている。


いつしか夜になると、今度は幻想的な天蓋(てんがい)のプラネタリウムに、大砲の「花火」が色を添(そ)えるのだった。

半年近くも地下で生活していた幾百千(いくひゃくせん)の反乱兵たちも、特に若い連中が耐(た)えきれずに外へと飛び出し、一群(いちぐん)に混じって消えていってしまった。

記念祭も終局を迎えると、いままで群(むら)がっていた若者たちは散り散りとなって、興奮の余韻(よいん)とともに、美々(びび)しい男女の囁(ささや)きがはじまる。
気高い理想の「地下の隠れ家」は、今や快楽と堕落(だらく)の温床(おんしょう)となったのである。

前へ 戻る 次へ
(c)1999-2024 Katsumasa Kawada.
All Rights Reserved.