The story of "LIFE"

第 01 章「道」
第 03 節「事態収拾」

第 09 話
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「リザブーグ王国」は、馬車道(どう)に沿(そ)ってはるか南東へと広がる、憲法(けんぽう)を持った王国(=立憲君主国)である。
ファラは不思議と、この名前に聞き覚えがあると思った。

「宿前の広場で集合しよう」と言って打ち合わせを終えてからも、背の高い護衛(ごえい)騎士ノイは、ほとんど身動きもせず、シェブロンの近くに立っていた。
彼は、誠実な風貌(ふうぼう)の奥の奥に有する、鋭い刃(やいば)のような閃(ひらめ)きを感じさせる男であった。

「いよいよだな。」
「はい。
しかし、彼の力を借りて、本当に良いものなのかどうか・・・。」

宿を退出する間際(まぎわ)に、宿主(やどぬし)が一行に対して何か声をかけたようだったが、ファラには聞こえなかった。
むしろ、博士とノイの間で交(か)わされた今のやりとりが、自分に関係していることのように思われたのである。

さっきとは打って変わって、外はかすかに日が差していた。
遠く南方を見渡すと、まるで伝説に現れる「ドラゴン」のような、うねりのある雲が高くかかっている。

「ファラくん、あれを魔法でつかまえてきてくれよ!」
「えっ!?
・・・でも、広い世界にはきっと、あんな奴もいるんだろうなあ。」

馬車は宿の前に用意されていた。
彼ら一行は、あえて別れを告げることもせず、それぞれの旅路(たびじ)につくのだった。

リザブーグ王国に向けて、馬車が出発する。

ファラは少しの達成感を胸に、まだ完全にはとれていなかった疲労のためか、心地(ここち)良い揺(ゆ)れの中、すぐに眠ってしまっていた。
そしていつしか、山々に船の汽笛(きてき)がこだましていった。

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