第 01 章「道」
第 03 節「事態収拾」
皆が出ていった部屋で、ファラは一人考え込んでいた。
フィヲのこと、シェブロンのこと、そして今聞かされた、「旅の目的」のこと。
「究極(きゅうきょく)の魔法『LIFE(ライフ)』か・・・。
そんなの初めて聞いた。
誰にでも使える魔法だって言ってたけど、ぼくは見たこともないし、使ったこともない。
シェブロン博士は魔法の意味を考え抜いた人だ。
そしてもう一度、みんなにこの大切さを伝えようとしている。」
突然、下の階から幼(おさな)いはしゃぎ声が起こった。
あの少年はいつも叱(しか)られながら、それでも彼らにとって必要な存在なのだ、とファラは感じていた。
そして階下の笑い声を聞きながら、昨日はじめて広場に着いたときのことを思った。
次第に風が吹いてきて、窓辺(まどべ)に置いてあった「ロニネの本」は、ぱらぱらとめくれて床に落ちてしまった。
ふと気が付くと、日が翳(かげ)ってきたためだろう、部屋の中は暗く、時間が止まったかのようだった。
ファラは「メゼアラム」を使ってみた。
すると、彼の髪(かみ)の色とよく似た、水色っぽい魔力に包まれて、あの「狼」が現れた。
「ぼくはお前と一緒に行ければいいや。
今日からお前は・・・(そうだな、『トゥウィフ』を使うから、『V』の字をとって)・・・『ヴィスク』だ。
よろしくね。」
ヴィスクは威厳(いげん)に満ちた、年老いた狼である。
ファラが声をかけても、じっと窓の外を睨(にら)んで動かなかった。
「さて、と。
博士にだけはお話しして、出て行こうか。」
ファラは「ロニネの本」を拾(ひろ)い、夕べからそのままになっている荷物を背負うと、ヴィスクを方陣に戻して部屋を出た。