The story of "LIFE"

第 01 章「道」
第 03 節「事態収拾」

第 06 話
前へ 戻る 次へ

一方、港町でも「機械仕掛(じか)けの人形」が見つかっていた。

それは前日に倒壊(とうかい)した「小さな宿」の地下室からである。
調査にあたっていたのはタフツァという青年学者で、彼はソマという女魔法使いと共に「LIFE(ライフ)」の主力として活動していた。

「やはりそうだったか。
彼らがこんなに危険な役目を、自ら買って出るはずはない・・・。」

タフツァは「ロボット」を担(かつ)いで地上まで上がってきた。
上には老人トーハが待っていた。

「わしも、これほど精巧(せいこう)なメカは初めて見たよ・・・。
キミ、悪いがそれを宿まで運んでくれないか。」

「LIFE」の一行がこの町を訪れたのは、今回が初めてではなかった。
シェブロンを始め、古参(こざん)のトーハ、ごく幼いときから加わっていたソマなどは皆、「三階建て宿」の者たちに顔が利(き)くのだった。

この頃ファラとの話を終えていたシェブロンは、タフツァが担いで持ってきた「ロボット」を見てため息をつくと、トーハと二人、自分の部屋へ入るように言った。

「なんということだ!
彼らはついに、魔法を使う『人形』まで作れるようになってしまったのか・・・。」
「おそらく、魔法は人間が込めたものです。
威力(いりょく)といくつかの魔法の使い分けだけを、『ロボット』がおこなっているんです。」
「理論的には、十分可能だ。
最近では『方陣』の距離計算だって、機械でやっているらしい。
そうすると、わしのような人間はもう、用なしだな。」
「そんなことはありません。
僕は彼らの自動計算された『方陣』が、目的と違った動作をして暴走した例をいくつか見ています。
しかしトーハさんの計算には狂(くる)いがありませんから。」

ここへソマが入ってきた。
彼女は二十歳(はたち)を過ぎたばかりの女性だったが、気持ちの純粋さと強さを共に具(そな)えていて、仲間からの信頼が厚い。

ソマは「ドゥレタ(地の魔法)」の使い手でもあるので、今日は自分の旅支度(じたく)を早く済ませて、町の被害状況を調べながら術師の能力を計ってきたのだった。

「ソマ、何か分かったかい?」

彼女の顔を見るとすぐに、タフツァが声をかけた。

「ええ。
震源からの距離ごとに被害状況を調べて、魔法の『粗(あら)さ』から判断したのだけれど・・・。
おそらく、使われた魔法の強度は3,500mw(=ムーワ、魔法の単位)くらいで、これが『ストゥラド(威力3)』で発動されたものだと思うの。
だから術師の魔力は全体で10,000mwを越えているはず。
もちろん、生態系破壊の『逆方向魔法陣』で起こされていたわ。」
「一万!
タフツァ君の総合力を以(も)って、渡り合えるかどうかだ・・・。」
「・・・。」

このとき一階ロビーが騒がしくなった。
「そういえば、山の『祠(ほこら)』に現れた術師は、はたして人間だったのか。
さっきザンダが飛び出して行きおったが・・・。」

すると階段を駆け登る足音とともに、子供らしく甲(かん)高いザンダの声が響いてきた。

「『祠』、見てきたよ!
あいつ『ロボット』だった。
メレナティレの城下町(じょうかまち)で戦ったのと、同(お)んなじやつだよ!!」

前へ 戻る 次へ
(c)1999-2024 Katsumasa Kawada.
All Rights Reserved.