第 01 章「道」
第 03 節「事態収拾」
ザンダが不服(ふふく)そうに部屋を出ると、ライオンのドガァが目の前にすわっていた。
ドガァは今年四歳になる、まだ若いライオンである。
ザンダはドガァが好きでたまらなかった。
「おい、ドガァ!
いっちょおれさまを乗っけて、昨日の『祠(ほこら)』まで行ってくれ。
あとで肉買ってきてやるからさ。」
するとドガァは階段を駆けおりて、ザンダに「来い」の合図をした。
人間に育てられたドガァは、人間の感性をよく理解しているのだった。
動き始めた「港町」を、人々に注目され、騒がれながら「ライオン」が駆けていく。
ここではもうドガァは「英雄」なのである。
特に、行方不明になった少年たちと近(ちか)しい人々が、「二人」に喝采(かっさい)を送る。
ザンダとドガァが街を出て、山へと向かう集落に入ると、風が強くなってきた。
街路の枯葉(かれは)が舞い上がる。
ライオンの鬣(たてがみ)に頭を埋(うず)めて、少年はしっかりとしがみついた。
短いマントが強く靡(なび)いている。
「前におれが敵の『ズーダ(熱)』をくらって痛い目にあったとき、おねえちゃんが『クネネフ(風)』をかけてくれたっけ。
あんときは魔法の力だったのに、なんだかおねえちゃんが頭をなでてくれたみたいに感じたんだ。」
ザンダが使う魔法は皆、攻撃的なものばかりで「インツァラ(爆発)」、「ゾー(重力)」、「フィナモ(炎)」である。
凶悪な魔法使いと対峙(たいじ)せざるを得ない旅の中で、彼は単純に「力」に対抗できるだけの「力」を求めたのだった。
北風の冷たさに身を縮めながら、ようやく「祠の跡(あと)」に到着した。
夕べ見た通り、ここは禿山(はげやま)のようになってしまっている。
あの後ザンダは自分で倒した相手がどうなったのか、はっきり確かめずに町へ引き返していた。
やはり怖かったのだ。
だがこの日、シェブロンによる注意とフィヲの励ましを受けて、彼は事実を見に行く決断をした。
見まわすと、向こうの方に地面のえぐれたような場所があり、確かに「敵」が着ていた服が見える。
しかしその様子が、どうにも異様な感じに見えるのだった。
「おれの魔法で、ぶっ潰(つぶ)しちまったのかな・・・?
いや、変だぞ。」
ドガァが先に行ってにおいを嗅(か)いでいる。
ザンダも近寄ってみた。
すると、それは壊れた「ロボット」で、周りには「オイル」が流れ出していた。
「なんだこりゃ!
いつか見た『兵隊』と、おんなじじゃねーか!!」