第 01 章「道」
第 03 節「事態収拾」
この頃ファラはまだ眠っていた。
魔法使いにとって「キュキュラ(総力発動)」というのは大変な消耗(しょうもう)となる。
十分に休息がとれなければ、何日も疲労が残ってしまうのである。
ザンダとフィヲはそれを承知で、静かにファラの部屋へ入っていった。
「ヘヘン、なんだファラくん、まだガキじゃんか!」
「あっ、やっぱりやめよう。
なんだか悪いよ。
・・・ほら、早く!」
フィヲはそっと歩いて出ていったが、ザンダはかまわずバタバタ歩いた。
古くなっている床板もギイギイ鳴った。
ザンダはこのいたずらが面白くて仕方ないといった様子である。
飽(あ)き足らずに扉のところで見ていると、どうやらファラが目を覚ましたらしい。
「んん、ザンダくんか・・・。
もうこんな時間だ。」
するとフィヲは、気がついて戻ってきた。
「ファラくん、きのうスゴイじゃない!
先生もたくさん、ほめていたんだから。」
「あ・・・。
先生って?」
「シェブロン先生っていうの。
・・・そうそう、ファラくんも一緒に旅しようって、先生が。」
「ホント!?
ぼくも魔法のこと、教えてもらいたいんだ。」
「わぁ、やったぁ!
良かったね、ザンダ!」
「フン、良かったのはおねえちゃんだろ・・・、まったく。」
ファラは、この少女に話しかけられるのを、極力(きょくりょく)避けたいと思っていた。
反対にフィヲのほうでは、この年齢の近い、困惑(こんわく)する少年をかまうのが可笑(おか)しくて仕方なかった。
また、彼女がはしゃいでいるのを見てやきもちをやいたザンダは、部屋を抜け出そうとしている。
そうこうしているうちに、話を途中から聞いていたシェブロンと老婆ヴェサが入ってきた。
「これ、フィヲ!
今日はあたしの話を聞きに来ないじゃないか。
なにやってるんだい。」
「あッ、おばあちゃん・・・、ごめんなさい。
男の子たちの手当てで忙しいと思ったの。」
「何が忙しいもんかい!
お前が来るのをずっと待ってたんだよ。」
この老婆とフィヲの関係は特別なもののようだ。
彼女は慌(あわ)ててヴェサについていった。
ファラは、ホッとした。
「ファラくん、一緒に旅をしてくれるんだってね。
こんなに心強いことはない。
・・・そうだ、まず旅の目的を伝えておきたい。
ザンダ、ちょっとファラくんと二人で話があるから、すまんが・・・。」
「なんだよ、目的って。
おれそんなの知らないぜ!」
「きみには、もうすこし大きくなったら全部話すから、そのときに旅を続けるかどうか、自分で決めるんだよ。」
「ちぇ、つまんねーの。
おれはまだ子供扱いかー。」