The story of "LIFE"

第 01 章「道」
第 02 節「港町」

第 13 話
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鍾乳洞(しょうにゅうどう)は崩れ去ってしまっていた。

「ロニネ」で身を守ったファラや少年たちの周りを除いて、一帯が崩れた岩だらけである。
全く地形が変わってしまった。

彼らは一命を取り止めたものの、深い深い「穴」に閉じ込められた形になった。
だが、しっかりと魔法で保護された少年たちは、まだ目も覚ましていない。

「あいつは?
まさか自滅はしていないはずだ。
それに上空のエネルギーが・・・消えている?」

見ると、真っ赤な「月」がだんだん大きくなっていくようだ。
そして次の瞬間、まわりの岩がものすごい音を立てて崩れ始めた。
ファラは杖を握って身構えた。

突然、恐ろしい獣の鳴き声が響き渡る。
「音」が岩を砕いていた。
壊れかかったバリアの中で、思わずファラは耳をふさいだ。

声の主は、あの「狼」である。

顔をあげたファラは驚き、怯(おび)えた。
夕べの三倍近い大きさの「狼」が、恐ろしく凶悪なエネルギーに満ち満ちて、こちらを睨(にら)んでいるのだった。

「ハッハッハッ。
小僧、見たか。
お前ごときが持つには、あまりにもったいない代物(しろもの)だ。
これこそが『生贄(いけにえ)』なのだ。
この力全て・・・、私のものだ。」

ファラは立ちすくんでいた。
動けなかった。
周りの岩は、悉(ことごと)くあの「声」で砕かれて吹き飛んでいた。

洞窟の痕跡(こんせき)はなく、一面が「禿山(はげやま)」のようになっている。

「ロニネ」も消し飛んで、もう一発受けたら、みんなやられてしまうだろう。

逃げるか?
どこに?
・・・そんなことは無理だと分かっていた。
「狼」は敵の「メゼアラム」で、完全に操られている。

ファラは少年たちの方へ走り寄り、力を振り絞って、彼らを囲む一帯に「ロニネ」をかけた。
これが生まれて初めて唱える「キュキュラ(総力)」であった。

『一発なら防いでやる!』

ところが、ここで何か変化が起こった。

「へへッ、ファラくんとやら!
ここまでかな?
いっちょ、イイモノみせてやろっかね。」

爆音が轟く。

敵の術師が地面に叩きつけられたようだ。
「狼」も消えてしまった。

「あっちゃあ!
やり過ぎたぁ。
おっさん、死んじまってるよぉ。
まあ、そうでなきゃ、ファラくんがやられてたかな。」

港より東の方角から、少年が歩いてくる。
よく見ると、フィヲといっしょにいた少年だ。
ファラよりも、ずっと幼い。

「おいおい、ドガァ、心の準備がまだだってのに・・・あっ、バカぁ!」

響き渡ったのは「ライオン」の雄叫(おたけ)びである。
ファラは耳がおかしくなるかと思った。

幼い少年は耳をふさいでしゃがんでいる。
ファラの後ろの方で、術師を失った「狼」が昨日の大きさになってうろついていたが、「ライオン」に吼(ほ)えられて震え上がり、小さくなってしまった。

「もう、うるせーんだよッ。
・・・・・・ほら、ファラくん、捕まえときな。」
「あ、ああ・・・、どうしてぼくの名を・・・?」

こうして、港町は危機を免(まぬか)れたのである。

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