The story of "LIFE"

第 01 章「道」
第 02 節「港町」

第 12 話
前へ 戻る 次へ

「小さい宿」では、壮年による尋問が行われていた。
町の警備隊には任せられない相手だ。

黒いローブの男は血色が悪く、とても醜いキズだらけの顔をしていた。
町にこの顔を見たことのある者はいない。
年はそれほどとっていないようだった。

「『ドファー(変身魔法)』を使って人の良さそうそうな老人を装っていたわけか。
あの現象は一体何なのだ?」
「ヒェッヒェッヒェッ、おれは情報と『エネルギー』を提供しただけさ。
あのガキども、ちっとは『魔法力』の足しになると思ってな。」

男が発する声は、まるで機械音のようだった。

「少年たちは、『祠』へ行ったんだな?」
「そんなことよりよぉ、あんたスゲぇ『魔法力』だなぁ、え?
おれにも少しわけてくれよ・・・。」

すると男は両腕を開き、壮年に覆(おお)いかぶさるようにした。

「テティムル!」

それは、「吸収」の魔法だった。
壮年は、はじめからこの男の狙いに気付いていた。

「そうはいかない。
しばし、ここでおとなしくしていてもらう。」

彼は相手の勢いのまま地面に倒してしまって、魔法を唱えた。
「ゾー(重力)」である。

「ウグゥ・・・、・・・ウェエ・・・。」
「悪いな、今は救出が先だ。」

壮年が「小さい宿」を出たとき、激しい揺れが起こった。
町の家々で、物が落ちて壊れる音がしている。

壮年は激震の中を広場へ急いだ。

一方、「小さい宿」は、完全に倒壊してしまった。
全くの手抜きで作られた家らしかった。

広場に壮年が戻るのを見て、ちょうど馬車からおりたフィヲが叫んだ。

「先生!
この地震、きっと『ドゥレタ(地の魔法)』です。
震源は、『北』です!」
「そうだろう、あの『祠』にちがいない。
ファラくんのでないとすると、他に『魔法使い』がいることは明らかだ。」
「・・・!!
『祠』に行ってくれたのね。
『ザンダ』と『ドガァ』が向かっています。
あの子、もちますか?」
「大丈夫だ。
すごい魔法使いだよ、彼は・・・!」

あの「ライオン」の名前を「ドガァ」というらしい。
それともう一人が、ファラの助太刀(すけだち)に向かっていた。
他の術士たちも異変の中心部を目指している。

やがて地震がおさまってきた頃、広場のどこからとなく叫び声が上がった。

「見てッ、黒雲が消えたわ!」
「あんなにでっかい雲が、あっという間に無くなりやがった!」
「ああ、なんて気味の悪い晩でしょう!」

これには、フィヲや壮年も驚いていた。

前へ 戻る 次へ
(c)1999-2024 Katsumasa Kawada.
All Rights Reserved.