The story of "LIFE"

第 01 章「道」
第 02 節「港町」

第 07 話
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ファラたちは、急いで外の様子をうかがいに出た。

すると、壮年が懸念(けねん)していた「北の森」の上空、数百メートルのところに暗雲が立ち込め、邪悪なエネルギーが集中して、更にどんどん膨れ上がっているのだった。

このなんともおぞましい光景に、町の人々はあてもなく逃げ惑い、町は完全な混乱状態となってしまった。

「ファラくん、君が扱うことの出来るもう一つの魔法は、『トゥウィフ』だ。
『振動』やあらゆる『波』、『衝撃』を司(つかさど)る魔法だよ。
魔獣の爪などに宿り、『ロニネ』を破る唯一の魔法でもある。
私たちは今、北の『祠(ほこら)』で何者かの手によって行われている、『負のエネルギー』の集中を抑え込むため、巨大な『正の方陣』を形勢した。
そこでファラくん、きみの力を貸してほしいんだ。」

ファラはここまで聞くと、うずうずしてたまらなくなってきた。
それは、彼の戦いがいつも孤独だったのに対して、今「パーティ」を得たように思えたからである。

行く先々で、自分の力が役に立ったことは、何度もあった。
しかし、今回のような難事件は経験したこともない。
そして一行の中心者である壮年が、自分に全幅の信頼を置いてくれたことが、殊(こと)のほか嬉しかったのである。

「ぼくにできるなら、何でも言ってください!」
「ありがとう。
『五芒星(ごぼうせい)』の方陣を作ったことはあるね。
私たちが立っているこの場所が、ちょうどエネルギーを中央に送り込む『方陣』の要所になっているんだ。
見ての通り、町の人々はパニックに陥(おちい)りかけている。
彼らを安全な場所へ誘導しながら、方陣にエネルギーを送り続けるとすれば、それは私の役割だ。
町にどのような危険が迫っても、全て引き受けよう。」

彼は内心で焦りを感じていたに違いない。
それでもファラに対する話し方は丁寧(ていねい)で、一貫して誠意があった。

「『祠(ほこら)』を中心とする5つの頂点に術士を配置し、充填(じゅうてん)を行うことで、『負のエネルギー』に対抗する『正の魔法場(ば)』が発動できる。
ただし、それだけでは事件の解決にならない。
町の少年たちを助け出さなくてはならない。
・・・そこで、きみには『山の祠』へ行ってもらいたいんだ。
『方陣』の中央で戦う任(にん)をお願いしたい。
増幅によって『正の魔力』が何倍にも引き出されるだろう。
現地で何が起こっているか予測はつかないけれども、一人で旅をしてきたきみならば、十分対応できる。」

町の上空に、北からの不気味な風が吹き始めていた。
旅の一行を護衛する騎士と、魔力を持たない老人が、人々に広場へ集まるよう懸命に呼びかけている。

「わかりました、やってみます!」
「たのんだよ。
では、大地の魔法陣に『メゼアラム(召喚)』と『トゥウィフ(衝撃)』の合体をとって、最小出力で発動させてみたまえ。
あとは私が『祠』まで飛ばしてあげるから。」

ファラは全てを了解したように頷(うなづ)くと、樫(かし)の杖を下向きに構え、右手の指で足元の地面に「古代文字」を描き始めた。
そして、左手はしっかりと杖を握っていた。

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