第 01 章「道」
第 02 節「港町」
白白(しらじら)と夜が明ける頃から、少年は一人、歩き始めていた。
小鳥たちの囀(さえず)りも始まっていた。
淡い光が漂いながら、恐ろしい闇を払っていく。
間もなく訪れる日の出を告げて、家禽(かきん)たちが競うように鳴き声を立てている。
もうこの近くには集落があるのだ。
人々の生活が、今日も営まれていく。
出発から三時間も歩いた頃だろうか。
漸(ようや)く向こうに水平線が見えてきた。
そしてこの時、暁(あかつき)の闇を破った太陽が、波間を照らし出した。
これでまた、一つの山を越えてきたことになる。
目の前に広がるのは、果てしなく広い大海原(おおうなばら)と、目覚めたばかりの港町である。
どうやら貿易港のようだ。
既に港へは貿易船が入って来ていた。
ここから続く長い道は、一つに広大(こうだい)な海への航路があり、更には南方遥か彼方の都市への馬車道がある。
ファラは大きく呼吸をすると、急に駆け出したい衝動に駆られた。
久しぶりに見る、水平線からの日の出だった。